風薫る5月とは言うものの、日増しに上昇する気温に辟易している人も多いのでは。都心の暑さを逃れ、自然豊かな緑の中に立つ名刹を訪ねてみるのはいかがでしょうか。とくに神奈川県の鎌倉地区は名刹・古刹が多く、これからの季節は紫陽花を代表とした花々が咲き誇る季節です。
そこで今回は『サライ.jp』に掲載された、『鎌倉名刹紀行』より、初夏の季節に訪れたい名刹をご紹介します。寺社の拝観時間や拝観料などのデータは変更になっている場合がありますので、各所へはご確認のうえお出かけください。
■見どころの多い、本邦初の本格的な禅寺|建長寺
臨済宗の寺格を定めた鎌倉五山の第一位である「建長寺」は、臨済宗建長寺派の大本山としてよく知られている名刹です。本邦初の本格的な禅寺でもあります。
国宝の梵鐘のほか、重要文化財の三門(三解脱門の略)や本尊である地蔵菩薩像が安置されている仏殿、禅寺の庭らしい趣を保った庭園など、見どころが多いのも魅力です。
■日本最大級の木彫仏を本尊とする鎌倉でも有数の古寺|長谷寺
聖武天皇治世の736年に開創した「長谷寺」。その本尊である十一面観音菩薩像の像高は9.18mと日本最大級の大きさを誇ります。本尊以外にも、三十三応現身像(鎌倉市指定文化財)、梵鐘(重要文化財)などが、本堂に隣接している『観音ミュージアム』にて展示されています。
回転式の大きな書架を一回転させると一切経を全て読誦したのと同じ功徳が得られるとされる経蔵や、初夏になると咲き誇る約40種、2500株のアジサイなど、「長谷寺」ならではの楽しみ方ができます。
長谷寺|巨大な十一面観音菩薩像の奇しき由来とは【鎌倉名刹紀行2】
■のしかかるような山門と、広々した本堂に感嘆|光明寺
鎌倉でも最大級の山門と本堂を持った「光明寺」の創立は1243年。山門は下が和風、上が中国風の二層建築の重厚な造りで、中央の扁額「天照山」は、後花園天皇の直筆と伝えられています。本尊の阿弥陀三尊像のほかに、関東七観音のひとつ、如意輪観音半跏像も安置されています。
さらに5月下旬には石庭の輪郭をかたどるサツキが、7月のシーズンを迎えると庭園の池の紅蓮がいっせいに花を咲かせ、訪れる人を楽しませてくれます。
光明寺|鎌倉最大級の山門&本堂の圧倒的迫力【鎌倉名刹紀行3】
■鎌倉最古の寺に残された苔むす石段|杉本寺・宝戒寺
「杉本寺」の開山は734年と、鎌倉の地で最も古くからあるお寺です。光明皇后(聖武天皇の后)が、夢の中に現れた観音様のお告げを受け、行基が彫った観音像を安置していた場所に本堂を据えたのが始まりだそう。仁王門の先にある苔むす石段が神秘的です。石段は摩耗が激しく危険なため、現在は通行止めとなっています。
杉本寺の親寺である「宝戒寺」は、北条氏の霊を慰めるため、そして国宝的人材を養成する道場として、後醍醐天皇の命により足利尊氏が建立しました。百種あまりの花が植えられ、春夏秋冬を問わず楽しめます。
杉本寺と宝戒寺|鎌倉最古の寺の苔むした石段【鎌倉名刹紀行5】
■静謐さに包まれた四季折々の草花に囲まれた書院|東慶寺と浄智寺
駆込寺や縁切寺として知られている「東慶寺」ですが、多くの鎌倉文士がその作品の中で東慶寺を描き、数々の文学碑も境内に建てられる、文士ゆかりの寺としても有名です。
東慶寺から鎌倉駅方向に歩いてすぐの「浄智寺」。本堂には過去、現在、未来の三世にわたり衆生の願いを聞き入れる三世仏が祀られています。その隣にあるのは、大正時代に造られた書院。四季折々に花を咲かせる草木に囲まれた空間は静謐さに包まれ、蒸し暑さの中でも涼しげな風情を感じられます。
東慶寺と浄智寺|北鎌倉に並び立つ文化人ゆかりの寺【鎌倉名刹紀行7】
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暑さをしのぐのに冷房の効いた部屋にいるのもいいものですが、緑に囲まれた自然のなかへお出かけするのもおすすめです。暑さ対策も忘れずに、のんびり出かけてみませんか。
文/編集部