『サライ』本誌連載「半島をゆく」の装画を担当している日本画家・北村さゆりさんによる、取材同行エッセイをお届けします。
文・画/北村さゆり
この日の取材は、鎌倉歴史ガイドの坂本哲夫さんと合流して、光明寺、材木座、名越切通しを訪れた。
鎌倉市内の道は狭い。すれ違う車はオープンカーやあまり見かけない外国車が多い。
材木座で車から降りると、若者たちがバーベキューをしていた。太陽と炭火の香り。水平線には、カラフルな帆がたくさん浮かぶ。海も人もなんだかお洒落。まだ5月なのに、湘南はさすがだな、と思う。
名越切通しはハイキングコースになっているので、邪魔にならないところでスケッチをした。安部さんたちは先へ進み、私は遅れてまんだら堂やぐら群に到着した。
国東半島で見た熊野磨崖仏にも似ている。残念ながら、時間切れでスケッチはできなかった。車に戻る途中、ここが“大町”であることに気づいた。鎌倉駅から鶴岡八幡宮までの商店街は小町通り。坂本さんに尋ねると、海を交通手段とした古代東海道時代の名残で、栄えていたから大町と言ったそうだ。地名の由来を知ると歴史が見えてくる。
切通しのスケッチ2点は反対側から描いたもの。狭い隙間が伝わりやすそうな方を水彩画にした(完成画は「サライ」12月号に掲載されています)。
文・画/北村さゆり
昭和35年、静岡県生まれ。日本画家。『利休にたずねよ』『三鬼』など小説の挿絵も担当。著書に『中世ふしぎ絵巻』など。
http://kitamurasayuri.jp/profile