ふぐ刺し、ふぐちり、焼きふぐ、創作料理…。さまざまな「福」を呼ぶ魚をたらふく食す。
全国には様々なふぐの調理法と食べ方がある。薄切りの刺身であるてっさから鍋のてっちり、焼きふぐや珍味まで。ワインとの相性も知り、ふぐを取り寄せて自宅でも楽しみたい。
ふぐ鍋 × オレンジワイン
ふぐといえば日本酒のイメージだが、ワインは何と組み合わせればいいか。食材本来の持ち味を存分に生かした真摯な料理で評判を取る『銀座 奥田』の料理長・飯塚栄二さん(42歳)と、ソムリエ・根上敦吏さん(40歳)に聞いた。
まずは「ふぐの薄造り」だ。「ふぐの薄造りに白子と薬味をのせた一品は、毎年冬にお出しするうちの定番」と飯塚さんは話す。これに合わせるのはニュージーランドの白ワイン「クラウディー ベイ」。
ふぐの薄造り × 白ワイン
「ふぐにはちり酢(※柑橘類の搾り汁を2種類以上混ぜたポン酢醤油。)をつけますが、ソーヴィニヨン・ブランというブドウ品種のライムやグレープフルーツといった柑橘やハーブの香りがちり酢によく合う。ふぐの身や白子の旨みや甘みを受け止める包容力もあります」(根上さん)
次の料理「焼き白子」には、ドイツのブドウ品種シュペートブルグンダーを使った赤ワインが好相性。他国では一般にピノ・ノワールと呼ばれる品種だ。
焼き白子× 赤ワイン
「同じピノ・ノワールでも味が濃く強いものより、淡さのなかに旨みがあるものを選びます。冷涼な気候のドイツ産は、ふぐの白子にぴったりです」(根上さん)
から揚げにはスパークリング
「ふぐ鍋」は7種の野菜と食す。「ふぐの風味を損なわないよう、大根、水菜など繊細な味わいの野菜を使います」(飯塚さん)
この鍋には、フランス・アルザス地方のオレンジワインを選ぶ。「ブドウの果皮とともに醸し、濃厚な色合いをもつオレンジワインには複雑な香りと味わいがあるので、ふぐの旨み、野菜の爽やかさ、特に薬味の柚子胡椒の辛みとの相性が抜群です」(根上さん)
また、ふぐ料理の定番、から揚げに合うワインも聞いた。
「塩やすだちをかけて食べるなら、スパークリングワインがいいでしょう。一方、醤油や味醂味なら日本のメルローやマスカットベーリーA、ややしっかりしたチリ産ピノ・ノワールなど赤ワインがお薦めです」(根上さん)
銀座 奥田
東京都中央区銀座5-4-8 カリオカビル地下1階
電話:03・5537・3338
営業時間:12時~13時、18時~21時(共に最終注文)
定休日:日曜、祝日不定休、月曜・木曜のランチ
交通:東京メトロ銀座駅から徒歩約2分
コース2万2000円~。22席。
飯塚さんが薦める招福スポット
波除神社
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。(取材・文/鳥海美奈子 撮影/福田栄美子)