ふぐ刺し、ふぐちり、焼きふぐ、創作料理…。さまざまな「福」を呼ぶ魚をたらふく食す。
全国には様々なふぐの調理法と食べ方がある。薄切りの刺身であるてっさから鍋のてっちり、焼きふぐや珍味まで。ワインとの相性も知り、ふぐを取り寄せて自宅でも楽しみたい。
「皮や骨などすべてを味わえるふぐだから、和食以外の多彩な料理にしてみたいと思ったことがきっかけ」と話すのは、大阪・福島の『バールハグ』店主・水野強さん(49歳)。高校を卒業し一旦、飲食業とは別の仕事に就いたが、30歳のとき、将来的な展望も考えて飲食業界へ飛び込み、その後この店を開店した。平成18年のことだ。
当初は、カルパッチョやパスタなどイタリア料理のみの店だった。あるとき、会員制のトラフグ料理店に出会い、通うように。トラフグの部位による味わいの違いを知るにつれ、刺身や鍋だけではない可能性があると感じた。
ふぐにはポン酢や塩が合う
「ところが、イタリア料理との融合を試せば試すほど、淡泊なトラフグには、やはりポン酢や塩、醤油が合うと思い至ったんです。だから、うちの店で出すなら、味のベースは和食、そこからスパイスを加えるなど味をふくらませようと考えました」(水野さん)
たとえば、「とらふぐのタルタル」は、一度身を昆布〆にしてから細切りにし、柑橘果汁を加えたポン酢のジュレとオリーブオイルで和える。「焼きとらふぐのサラダ仕立て」も、塩味をベースに山椒やチリパウダーで味付けして焼き、山葵菜 、茗荷といった和の野菜も加えたサラダにする。無理にイタリア料理独特の香味が効いた味付けにはせず、和食とは異なる風味や盛り付けを感じられるよう心がけたそうだ。今では、毎日5~10品のふぐ料理を用意し、それを目当てに訪れる常連客も増えた。
ふぐ以外のメニューもパスタから肉料理まで充実している。
「イタリア料理も織り交ぜて味わい、ふぐのさらなる魅力を発見してほしい」と水野さんはいう。
バールハグ
大阪市福島区福島7-3-16
電話:06・6454・0089
営業時間:18時~翌3時(最終注文翌1時30分)
定休日:不定
交通:JR福島駅から徒歩約5分。14席
水野さんが薦める招福スポット
福島天満宮
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。(取材・文/中井シノブ 撮影/伊藤 信)