ふぐ刺し、ふぐちり、焼きふぐ、創作料理…。さまざまな「福」を呼ぶ魚をたらふく食す。

全国には様々なふぐの調理法と食べ方がある。薄切りの刺身であるてっさから鍋のてっちり、焼きふぐや珍味まで。ワインとの相性も知り、ふぐを取り寄せて自宅でも楽しみたい。

手前は、鶴福コースに登場する絶巧なてっさの鶴盛り。写真は3人前。奥は、とおとう身や身皮など、ふぐの皮を湯引きした一皿。
向こう側が透けるほど薄切りにした刺身の厚さは1mmほど。2~3日寝かせたふぐの身は、繊細な旨みに満ちている。

日間賀島の東部沿岸に佇む、家族経営の小ぢんまりとした料理宿『島灯りの宿 とく川』。島で生まれ育った店主の宮地由也さん(32歳)は、「てっさコンテスト」で幾度も優勝した実力の持ち主である。

「てっさは“切るは技術、盛るは芸術”といわれていますが、その双方が備わって初めて完成度の高い美しい仕上がりになります」
 
そう話す宮地さんの鶴盛りは、実に優雅だ。刺身一枚一枚が立体的で、躍動感に溢れている。
 
技術面では、いかに刺身の厚さを均等かつ、透けるほどに薄く切るかが肝要。包丁の切れ味は重要で、宮地さんは日本刀と同じ焼き入れを行なう本焼きのふぐ引き包丁を用いる。そして熟練の技で引いた刺身を迷いなく1枚ずつ器に置き、鶴の羽を描いていく。下描きの類はない。宮地さんはいう。

「頭に仕上がりの姿を思い描き、手で刺身を器に置いていくのでセンスが問われます」

今回、特別につくってもらった亀盛りも見事で、立体感ある甲羅の出来に驚く。

今回、特別につくってもらった亀盛り。足にはふぐのヒレを利用し、優雅に泳ぐ様子を表した。金粉をまいた尾が美しく、アートな作品に仕上がっている。
小ぶりの椀を伏せて甲羅の土台とし、その上に刺身、焼いて亀甲形に切った刺身を順に貼り付けていく。

「目で見て楽しんでいただける料理をつくることが好きなんです」と宮地さん。てっさにつきものの皮の湯引きは別盛りにし、あしらいの大根にも飾り切りを施して美技を披露する。

創意工夫あるふぐ尽くし

てっさ用のふぐは、漁師である宮地さんの父が伊勢湾で獲ってきた天然のトラフグか、上質な養殖ものを用いる。旨みがのるよう2~3日寝かせてから調理する。

ふぐのコースは3月末まで提供。銀餡をかけた白子の茶碗蒸し、低温調理した白子の軍艦巻きなどの創作料理も登場し、最後まで飽きさせない。4年前に改装した清潔感ある島の宿で、心ゆくまでふぐ料理を堪能できる。

店主の宮地由也さん。平成3年、日間賀島生まれ。18歳で島内の日間賀観光ホテルにて修業後、23歳で実家の料理宿を継ぐ。

島灯りの宿 とく川

愛知県知多郡南知多町日間賀島久渕道下21
電話:0569・68・2074
チェックイン15時、同アウト10時
料金:1泊2食付き、ひとり2万9700円~ 4室。
交通:河和港より高速船にて約20分。日間賀島東港より徒歩約10分 送迎あり。

宮地さんが薦める招福スポット

サンライズビーチ

島の東部にある浜辺で、海からのぼる朝陽を眺められる。宮地さんは時折、素足でこの砂浜に立つことで英気を養っているという。
愛知県知多郡南知多町日間賀島北地
電話:0569・68・2388
交通:日間賀島東港より徒歩約10分
問い合わせ:日間賀島観光協会

※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。(取材・文/安井洋子 撮影/森本真哉)

『サライ』2024年1月号の特集は『『ふぐ」で万福』。

 

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