ふぐ刺し、ふぐちり、焼きふぐ、創作料理…。さまざまな「福」を呼ぶ魚をたらふく食す。
全国には様々なふぐの調理法と食べ方がある。薄切りの刺身であるてっさから鍋のてっちり、焼きふぐや珍味まで。ワインとの相性も知り、ふぐを取り寄せて自宅でも楽しみたい。
冬期のみ、ふぐを提供する店が多い東京で、通年ふぐを楽しめる店がある。銀座から徒歩圏内の新富町。昭和初期に建てられた3階建ての民家を改装したモダンな店内の1階はカウンター席で、ひとりでも気軽にふぐを堪能できる。
仕掛け人は、大阪生まれの宮脇 崇(たかし)さん(41歳)。大阪の会員制ふぐ料理店で修業し、令和元年に『ふぐ倶楽部 miyawaki』を開いた。同店のマネージャー、小原 翔さん(32歳)はいう。
「ふぐの消費量が日本一ともいわれる大阪で腕を振るった宮脇は、東京にふぐを広めたい、という一心でこの店を始めました。目指すのは、“日本一敷居の低いふぐ屋”。ですから入りやすい店構えにし、メニューも工夫しようと。関西では馴染みのある焼きふぐをコースの目玉にしました」
焼き肉のような満足感
扱うのは3kgほどの質の高い養殖のトラフグ。焼きふぐは、身に付いている薄皮部分の身皮や、腹側の身である腹身など複数の部位を、店員が焼き台の網で焼いて供してくれる。味付けは塩だれ、醤油だれの2種。
《焼きふぐ塩だれ》
「ふぐの水分を逃がさぬよう表面に胡麻油を馴染ませてからタレを絡めて焼きます。火が通ったらすぐに口にできるよう、余熱が入るのを考慮して火入れをします。ふぐの繊細な旨みを最大限に味わっていただくためです」(小原さん)
刺身や鍋で味わうよりも旨みが濃く、焼き肉のような満足感をえられるのが醍醐味だという。
《焼きふぐ醬油だれ》
焼きふぐのほか、てっさやから揚げが付くおまかせコースが9900円と破格。ふぐといえばコース料理が定石だが、焼きふぐをはじめ、真子(卵巣の粕漬け)のピザなどが単品の注文でも楽しめる。2軒目としても気軽に利用できる、今までにないふぐの良店だ。
ふぐ倶楽部 miyawaki
東京都中央区銀座1-22-12 昭和2年ビル右側
電話:03・5579・9842
営業時間:17時~22時30分(最終注文)
定休日:不定
交通:東京メトロ新富町駅、銀座一丁目駅より徒歩約5分
1階カウンター6席、2階・3階はテーブル18席。個室あり。
コース9900円~。
小原さんが薦める招福スポット
鐵砲洲稲荷神社
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。(取材・文/安井洋子 撮影/海老原俊之)