多忙な名医が長年続けるストレスフリー習慣
「医者の不養生」とは、もはや過去の話。
医療の逼迫や健康意識の高まりによって、多忙を極める名医たち。
自身の体調はもちろん、高い業務パフォーマンスを発揮するために、どんな「健康術」を実践しているのでしょうか。
登場する5人は、世界最新の医療データやエビデンスなどの「情報」に明るいだけでなく、患者や相談者らに日々接しており、「臨床経験」も豊富。10万部を突破するベストセラーも多数生み出し、健康増進に関心を持つ人たちのニーズも熟知しています。
共通するのは、時間もお金もかけず、無理なく負担なく「ほどほど」にできる方法を、長きにわたる「習慣」として、コツコツ実践していること。
今回は、「老化予防」の名医、白澤卓二先生の健康術を紹介します。
文/白澤卓二(「老化予防」の名医)
朝食は一枚の皿に盛った「長寿サラダ」
一連のコロナ禍をきっかけに、夕食に重きを置いていた食事の内容を、思い切って朝食メインへとシフトしました。朝をしっかりと食べ、その分、夜はチーズとワインなどで軽く済ませるようにしています。
朝食の中心はサラダです。サラダといっても、おそらく皆さんが想像しているようなものとは違います。野菜の栄養素を最大に引き出す調理法を用い、魚などのタンパク質も加えたメインディッシュともいうべきサラダです。
白澤式「長寿サラダ」の一例
野菜は栄養面を考えてさまざまな色合いのものを用いているので、見た目もきれいで食欲をそそります(上掲のイラストはある日の朝食の一例)。
このメインディッシュに加え、湯豆腐や国産黒大豆の納豆を添えることがよくあります。野菜に魚や豆腐、納豆を加えることで、高齢になると不足しがちなタンパク質をしっかり補うことができるからです。いずれも味付けは最低限に止(とど)め、素材そのものの味を楽しんでいます。
野菜は、極力、有機無農薬のものを選びます。農薬が体に悪いことは言うまでもありませんが、有機農法で育った野菜は栄養価が高く味も濃いからです。
私は長年にわたり認知症の研究を続けていますが、最大の認知症予防策は「老化を遠ざけること」という結論に至りました。老化を遠ざけることができれば、認知症以外の生活習慣病とも無縁になるはずで、まさに健康長寿が実現できるのです。
私にとって、この朝食は「長寿サラダ」とでも呼ぶべき存在です。
脳を活性化させる5つの習慣
食事以外でも、ちょっとした習慣で脳の活性化が図れ、老化を遠ざけることはできます。私が実践し、患者さんにも勧めている方法をいくつか紹介します。
白澤式「脳の活性化」の習慣
・利き手と反対の手を使う
普段使っていない部分の脳が活性化します。箸(はし)やペン類だけでなく、歯ブラシもいいでしょう。
・2日前の日記を書く
今日の日記はすぐに書けても、2日前となるとなかなか思い出せません。それでも「思い出そう」とすることが脳のトレーニングになります。
・本や新聞を音読する
文章を読むときには、さまざまな脳の領域を使います。さらに音読すれば、言葉を発する機能、それを聞く機能も使われ、脳への刺激が大きくなります。
・速歩きとゆっくり歩きを交互に
速歩きとゆっくり歩きを1分ずつ交互に繰り返すと、さらに脳の活動に変化を与えられます。
・ひと口30回噛(か)む
噛む動作は脳を刺激し、認知機能を高めます。私自身、噛み応えがある堅い食べ物を意図的に選ぶこともあります。
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白澤卓二(しらさわ・たくじ)
昭和33年、神奈川県生まれ。千葉大学医学部卒業。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学などで、国際予防医学協会理事長、日本アンチエイジングフード協会理事長なども務める。著書に『100歳までボケない101の方法』など多数。お茶の水健康長寿クリニック院長。