「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第162回は、「八朔」をご紹介します。旧暦の八月一日を指す「八朔」。当時の人々にとって、大変特別な日だったとされています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「八朔」とは何とよむ?
「八朔」の読み方をご存知でしょうか? 「八」を「はち」とは読みません。
正解は……
「はっさく」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「陰暦の八月朔日(ついたち)のこと。また、その日に行われる行事。」と説明されています。旧暦の八月一日のことである「八朔」。夏から秋へと移り変わる八朔には、ある行事が行われていました。
それが、「田実(たのむ)の節供」です。主に農家で行われていた行事で、収穫に先立ち、その年に取り入れした稲穂を、日ごろお世話になっている人々に送っていたそうです。後にこの風習が一般にも普及し、朝廷や幕府の間でも流行しました。なお、「田実の節供」の「田実(たのむ)」は、「頼む」とかけていると言われることもあります。
行事の特徴は地域によって異なります。例えば、三重県紀北町(きほくちょう)では、盆踊りと同じように「八朔踊り」を踊る風習があり、熊本県ではナスに足をつけた「花馬」というものを作り、海や川に流す風習があるそうです。
また、天正18年(1590)の八朔に、徳川家康が初めて江戸城に入城したことから、武士の祝日の一つにもなりました。この日は大名や旗本などが白帷子(しろかたびら)を着て登城し、将軍家へ祝辞を申し述べる行事が行なわれていたのです。
「八朔」の漢字の由来は?
「八月朔日」の略語である「八朔」。「朔」という漢字には、「ついたち」という意味があります。新月のことを朔月と表現することもあり、「一番初め」「一日目」という意味が含まれているのが分かりますね。
みかんの一種・はっさく
旧暦の八月一日のことである「八朔」。みかんの一種である「はっさく」は、この「八朔」に由来することをご存知でしょうか? 「はっさく」は、爽やかな香りと程よい酸味が特徴で、和歌山県で多く生産されています。
はっさくは、江戸時代に広島県の恵日山浄土寺で発見されました。明治時代に入り、当時の恵日山浄土寺の住職が「八朔には食べられるだろう」と言ったことから、「はっさく」という名前が付いたそうです。しかし、はっさくの旬は一月中旬から四月下旬頃なので、八朔の頃はまだ果実が熟していないと言えます。
程よい酸味と独特の苦みがある「はっさく」。栄養豊富で、免疫力を高めるだけでなく、疲労回復やダイエット効果も期待でき、花粉症対策にも効果があるといわれています。酸味や苦みが苦手という方は、シロップに漬けると食べやすくなるのではないでしょうか?
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今回の「八朔」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 旧暦の八月一日のことを指す「八朔」。現在、私たちが使っている新暦では、八月下旬から九月頃にあたります。
夏のピークが過ぎ去り、だんだんと秋に近づいていく季節。残暑に負けず、毎日健やかに過ごしたいものですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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