『サライ』7月号の特別付録は日本が世界に誇る特撮ヒーロー・ウルトラマンシリーズを日本画で描いた作品のポストカードブック。日本画家の村上裕二さんが制作した背景や付録にした作品の見どころを解説します。
村上裕二さん(日本画家・58歳)
画面狭しと躍動するウルトラマンや怪獣たち。特撮が生んだヒーローを、日本画として描いたのが、画家の村上裕二さんだ。なぜウルトラマンを描いたのか。
「20年くらい前でしょうか。画家として描きたいものと、描いてほしいと頼まれるものが、乖離(かいり)してしまったのです」
村上さんは、若くして認められた日本画家だ。芸術家の兄(村上隆)の背を追い、進学した東京藝術大学美術学部で、本格的に日本画を学び始める。
国内最大級の日本画の公募展に公益財団法人日本美術院が主催する「院展」があるが、この院展で、村上さんは日本美術院賞(大観賞)を33歳と35歳の2度、受賞する。また、現代の日本画壇を代表する作家たちの称号「同人(どうにん)」に30 代半ばで早くも推挙され、院展の審査をする側に回った。
傍から見れば順風満帆のようだが、本当に描きたいものが徐々に見えなくなっていったという。
村上さんは平成20年、突如、画家の活動を停止。得度し、山門での修行に入る。
「丸2年ほど周囲との交信も一切断ち、修行に励みました。制作を再開してからは筆の動くまま、ひたすら下図を2000枚以上描きました。その中に、描きたいものの形が現れてきたんです」
日本画の構図・画材・伝統技法を駆使
得度後、制作を再開し、描き続けた下図2000枚の中から現れてきた姿形は、まるでウルトラマンのようだった。
「自分が本当に描きたいものを再認識できたと思いました」
昭和39年生まれの村上裕二さんにとって、ウルトラマンは常にヒーローの象徴だった。
「子どもの頃って、日が暮れ始めると無闇に寂しくなりますよね。家の外も、中も、だんだんと薄暗くなっていく様子が、無性に悲しかったのでしょう。そういう寂しさや不安を解消してくれる存在が、ウルトラマンだったのです」
そうやって誕生したのが、今号の特別付録のポストカードにもなった、ウルトラマンシリーズを題材にした作品だ。日本画の伝統的な技法や構図、画材と村上さんの手により、ウルトラマンは新しい命を吹き込まれた。
取材・文/角山祥道 撮影/吉場正和(人物) 画像提供/求龍堂
【特別付録】村上裕二「ウルトラマンシリーズ日本画ポストカードブック」のご案内
村上さんの画集『ウルトラマンの世界』より8作品を厳選。
気鋭の日本画家・村上裕二さんが描くウルトラマンやウルトラセブン、バルタン星人などの日本画作品をポストカードに配しました。
ポストカードは12.0×18.6cmの大判サイズ。
8枚ひと組で、様々な図柄をお楽しみいただけます。
作者は、日本画公募展「院展」を主催する日本美術院の審査員で、気鋭の画家・村上裕二さん。金泥や岩絵の具、点描技法により独自の想像力で描きあげた大作の数々をポストカードとしてお届けします。
※この記事は『サライ』本誌2023年7月号より転載しました。