文・写真/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ・バンコク在住ライター)
香草のバジルを使った肉炒め料理のガパオ(ライス)。日本でも知名度が上がっていて、食べた経験がある方も多いでしょう。
タイ料理の定番中の定番といえるガパオ。メニューを選ぶ時、また自分で作る時も、「もう面倒くさいからガパオでいいや」という感じで人々の間に浸透しています。その理由は、ガパオ(ホーリーバジル)とひき肉、唐辛子、ナンプラー、玉ねぎなどシンプルな具材で簡単に作れるからです。屋台やコンビニの弁当コーナーには必ず並んでいます。
LCC(格安航空会社)が台頭する前、筆者はタイ各地への取材に長距離バスで行っていたのですが、その際も必ずと言っていいほどガパオが弁当で提供されていました。「ガパオだったら誰でも文句はないだろう」ということでしょう。
そのガパオ、正式の料理名は“パッ・ガパオ(ガパオ炒め)”。オーソドックスな豚肉や鶏肉だけでなく、魚介を使ったり、ご飯の代わりに麺類を使ったりとバリエーションもいろいろ。バジルさえ使って炒められていれば何でも“パッ・ガパオ”なんです。この適当さがまたタイらしいですね。
そんなガパオですが、現代風に進化させた料理として提供しているお店があります。
バンコクの高級住宅街であるスクンビット通り。富裕層や外国人居住者など舌の肥えた顧客が多いことから、レベルが高いレストランが立ち並ぶ激戦区です。ここに店を構えるのが「ガパオ・クン・ポー」。店名はタイ語で‟パパの作ったガパオ”。オーナーシェフのカイシット・ウドムクンナータムさんが娘に作ったガパオが好評だったことから2017年にオープンしました。
「娘の健康に気を使って作っていた時と同じように、化学調味料などは一切使いません。素材も冷凍物ではなく新鮮な物だけを使っています」
定番の鶏肉や豚肉(各129バーツ=約500円)のガパオはもちろん、肉類や魚介類を使った様々な種類が用意されています。 オーナーが日本贔屓であることから、日本の丼物にヒントを得た和牛ガパオ丼やサーモンガパオ丼(各189バーツ=約740円)もあります。
最近、タイでも富裕層を中心に健康志向が高まっていることもあり、ヴィーガン用ガパオ、ケトン食(*)用ガパオまでもがメニューに並んでいます。
*タンパク質と脂肪をしっかりと摂取しながら、糖と炭水化物の摂取を可能な限り減らす食事療法。
また自分好みのガパオを選べるのも特徴。ガパオの辛さはレベル0~37まであり、~3までは無料、以降は1レベルアップごとに10バーツ(約39円)になります。お米も普通の物からジャスミンライスや玄米に変更することもできます。
価格は屋台や安食堂の2倍以上と、庶民的料理であるガパオにしては高めの値段ですが、いつも繁盛しています。
ガパオの本場タイでは、今もこんな風に進化が続いているのです。
ガパオ・クン・ポー https://www.facebook.com/kaprowkhunphor.thailand
文・写真/梅本昌男(タイ・バンコク在住ライター)。タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌アゴラなどに執筆。観光からビジネス、グルメ、エンタテインメントまで幅広く網羅する。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。