椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術を受けたのにも関わらず、痛みやしびれが治らない……。
残念ながらそのようなケースも少なくありません。
しかし、少し違う角度で考えると、有効な解決策も見えてきます。
手術をしようか迷っている方も、ぜひお読みいただけると幸いです。
もし手術をしても良くならなかったら
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の痛みやしびれがなかなか良くならず、
「もう一時も耐えられない」
「早く楽になるならなんでもいい」
「なんとしてもこの痛みから逃れたい」
そんな気持ちから、思い切って手術を選択される方も多いでしょう。
最近は日帰り手術や手軽さをうたった病院の広告も多く目にしますので、それで治るならと高額な手術をお受けになろうかと迷っておられる方もいるかもしれません。
もちろん手術で良くなればそれに越したことはありませんし、実際に良くなる方も多いでしょう。
しかし、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)には、
「手術をしたのに痛みが治らない」
「手術をして一時は良くなったが、また再発してしまった」
「以前手術したところと別の部位にヘルニアや狭窄ができてしまった」
「何回か手術をしたけれど良くならない」
このような問い合わせが多く寄せられています。
一大決心で手術を受けた結果が治らないのでは、絶望的な気持ちになるのも無理もありません。
治らなかったからといって病院は責任を取ってくれませんし、「患部は取り除いて手術は成功したのにおかしいですね」などと言われて退院させられるのが関の山。
※本当にこのように言われたというケースを、筆者は多数聞いております。
それでは手術結果が思わしくない場合、なにも打つ手はないのでしょうか。
いえ、できることはたくさんあるのです。
手術で治らないのはなぜなのか?
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の症状が、手術をしても良くならなかったのであれば、単純に考えてそこが原因ではなかったのではないでしょうか。
そのように考えるには、2つの大きな理由があります。
まず第一に、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、痛みのない健常者でもたくさん見つかりますので、痛みやしびれとは関係ない可能性があります。
例えば次の画像は腰や脚に全く痛みのない人(健常者)の背骨を検査した結果についてのグラフですが、椎間板ヘルニアは76%の人に見られた、という結果が出ています。
大事なことなのでもう一度記しますが、このグラフは腰や脚に全く痛みのない人(健常者)の背骨を検査したら、76%の人にヘルニアが見つかったという結果です。
また椎間板の変性(変形など)は85%の人に見つかっています。
つまりヘルニアや椎間板などの変形はほとんどの人に見られるということです。
ちなみにこの研究は、国際腰痛学会のVOLVO賞(年に一度のノーベル賞にあたる賞)を受賞している、信頼性の高いものです。
また、狭窄症の原因となる脊椎分離症・辷り(すべり)症などについても、同様の結果が見られています。
分離症もすべり症も、急性腰痛慢性腰痛の方に対して、健常者の方が発見率が高いという結果です。
つまり、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は健常者にもよく見られるありふれた現象であって、必ずしも痛みやしびれの原因となるとは限らないということです。
筋肉の発痛点=トリガーポイントが原因になる
第二に、腰や脚に痛みやしびれを起こす原因は他にもあるということです。
そのひとつが筋肉です。
次の画像を見てください。
これは坐骨神経痛の典型例、ではありません。
これは股関節の奥にある「小殿筋」が原因でおこる筋筋膜性の痛みのパターンです。
筋肉が何らかの原因で過緊張をおこしてしまうと、トリガーポイントと言われる発痛点が生じます。
小殿筋にトリガーポイントが生じると、赤い範囲に痛みやしびれなどがおこりますが、このような症状で病院に行くと「坐骨神経痛」と診断されます。
そこで検査をすると、前記のようにたいてい背骨にヘルニアや狭窄が見つかり、それが原因とされて治療や手術がおこなわれます。
しかし原因は背骨でも神経でもなく「筋肉」なので治らない……。ということが実際にあるのです。
トリガーポイント・筋筋膜性疼痛症候群について、詳しくは以下のページもご参考になさってください。
腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html)
手術で治らなかったワケと2つの解決策
つまり、手術で治らなかったのは、
1.「筋肉が原因の痛みやしびれ」であったにも関わらず、
2.「椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症」が見つかったためにそれが原因とされ、
3.患部を取り除くなどの手術をしたが、
4.そこは本当の原因ではなかったので、
5.「痛みやしびれ」が治らない
ということではないでしょうか。
では手術で治らなかった場合、どのようにしたら良いのでしょうか?
その解決策として、筆者は次の2つをおすすめしています。
1.痛みの本当の原因「トリガーポイント」の治療とセルフケア
2. 腰を支える「体幹インナーマッスル」の機能回復
トリガーポイントの治療とセルフケア
痛みの原因が筋肉の発痛点=トリガーポイントであれば、治療する方法はたくさんありますし、自分でセルフケアをおこなって治すこともできます。
トリガーポイントとは、ごく簡単に説明するならば『ひどい筋肉のこり』です。
肩がこったらどうしますか? マッサージを受けたりストレッチなどの運動をしたりして解消することができますよね?
それと同じように、痛みの原因となっている筋肉をほぐしたり、積極的に運動をすることで治していくことができるのです。
とくにおすすめなのが、テニスボールなどでセルフマッサージをすることとストレッチです。
以下の過去記事を参考にしてみてください。
【ヘルニア・脊柱菅狭窄症】 テニスボールで脚の痛みやしびれを改善する方法(https://serai.jp/health/1050575)
ヘルニア・腰痛を改善! 寝ながらできる腰痛体操 誰でもできる5つのストレッチ(https://serai.jp/health/1028037)
腰を支える「体幹インナーマッスル」の機能回復
腰や脚の痛みをおこすのはトリガーポイントですが、実はその背景にトリガーポイントができてしまう原因も存在します。
その大きな原因のひとつが、「体幹インナーマッスルの機能低下」です。
背骨や腰や骨盤は、その周囲の筋肉によって支えていますが、お腹側や骨盤の中などにもその大事な役目を担っている筋肉があります。
それが腹横筋や腹斜筋、骨盤底筋などの「インナーマッスル」と呼ばれる筋肉群です。
腰や脚に痛みがある方の多くはこれらの筋肉がうまく機能しなくなっていて、腰や背骨や骨盤を支える力が弱くなっているのです。
これら「体幹インナーマッスル」が弱くなると、その分ほかの筋肉で腰を支えなければなりません。
それが長く続くと一部の筋肉に疲労が蓄積し、血行不良をおこして固くこり固まってトリガーポイントが生じてしまうのです。
逆に「体幹インナーマッスル」を回復強化すると、痛みをおこした筋肉の負担が減り、トリガーポイントが治るということなのです。
体幹インナーマッスルのトレーニングにも様々な方法がありますが、筆者は腹式呼吸や専用のエクササイズポールを使用した安全で効果的な方法をおすすめしております。
次の過去記事を参考にしてみてください。
今年こそサヨナラ腰痛!腰を強くするインナーマッスルトレーニングとは?(https://serai.jp/health/1055121)
この記事があなたの腰や脚の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
その他以下の記事が参考になるかもしれませんので、良かったらご覧ください。
腰痛に効くツボはココ! 中殿筋をテニスボールでゆるめて腰痛改善【川口陽海の腰痛改善教室 第87回】(https://serai.jp/health/1069105)
腸腰筋を鍛えて腰痛改善! 腰が痛くても安全なトレーニング法【川口陽海の腰痛改善教室 第86回】(https://serai.jp/health/1067156)
慢性腰痛を改善!誰でも簡単にできて効果的な6つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第21回】(https://serai.jp/health/373174)
拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html