かつて琉球と呼ばれた沖縄。先史時代から人が住んでいたといわれるこの地に、1429年、第一尚氏が琉球を統一しました。王府は首里(現・那覇市内)。
立地をいかした海上貿易で、日本および中国、朝鮮、東南アジアの架け橋として栄えた琉球は、独自の文化を育み、染織、漆芸、陶芸などの高い芸術性を示す工芸品の数々を生み出しています。
沖縄県復帰50年を迎えた今年、琉球国王・尚家ゆかりの品々を集めて紹介する展覧会が開かれています。(6月26日まで)
本展では、琉球時代の書画・工芸品、歴史・考古資料に加え、現代の復元作品など、国宝、重要文化財を多数含む総出品数約290件を展観します。(会期中展示替えあり)
本展の見どころを、主催者にうかがいました。
「本展には国宝、重要文化財クラスの美術品が数多く出品されますが、そのなかでも注目の作品をご紹介します。
まずは国宝の『黄色地鳳凰蝙蝠宝尽青海波立波文様紅型綾袷衣裳(きいろじほうおうこうもりたからづくしせいがいはたつなみもんようびんがたあやあわせいしょう)』。鮮やかな黄色地に散らされた吉祥文様や雑宝文様は清の官服に用いられるモチーフで、花折枝や七枚笹紋には日本の影響がみられます。中国と日本の両方の正装の形状が融合している点が琉球の王朝文化を物語ります。
同じく国宝の『紅色地龍宝珠瑞雲文様紅型綾袷衣裳(べにいろじりゅうほうじゅずいうんもんようびんがたあやあわせいしょう)』は、大ぶりな模様型を2枚用いた大鎖文様で、いずれ王となる若者が礼装用に着用したと推察されます。地色は『紅』とありますが、青みをおびた淡赤色は琉球では『花色』と称します。
琉球王朝に伝わった宝剣『金装宝剣 拵(号 千代金丸)(きんそうほうけん こしらえ(ごう ちよがねまる))』も国宝。日本製の刀に琉球風のきらびやかな装飾をほどこした拵をそなえた優品です。柄がしらに彫られている『大世』の文字は、第一尚氏の6代尚泰久王の神号といわれています。
重要文化財の『銅鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)(どうしょう きゅうしゅりじょうせいでんしょう(ばんこくしんりょうのかね))』は、仏教に深く帰依した6代尚泰久王が鋳造を命じた梵鐘で、首里城の正殿に懸けられたと伝わります。『万国の津梁(架け橋)』にならんとの銘文が彫られており、王国の気概が感じ取れます。
歴代の琉球王国の死後に描かれた肖像画である『御後絵(おごえ)』は、戦災ですべて焼失しましたが、模写復元『尚穆王御後絵(しょうぼくおうおごえ)』は一般財団法人 沖縄美ら島財団の復元事業によって、東京藝術大学の保存修復日本画研究室が手掛け、鮮やかに蘇った作品です。
展示作品は、沖縄出身の仲間由紀恵さんが音声ガイドで分かりやすく解説してくれます。会場で琉球美術をじっくりご鑑賞ください」
NHKの朝ドラ「ちむどんどん」で盛り上がる沖縄!! ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
会期:2022年5月3日(火・祝)~6月26日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
展覧会公式サイト:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
巡回:九州国立博物館(7月16日(土)~9月4日(日))
取材・文/池田充枝