世界でその名を知られる日本の画家の筆頭はと問われたら、葛飾北斎(1760-1849)といっても過言ではないでしょう。ゴッホをはじめフランス印象派を魅了したこと、自らを「画狂老人」と称した破天荒な生き様、数え年90歳で亡くなるときの言葉、「天があと10年私の命を延ばしてくれたら本物の絵描きになれたろう」にみるド迫力の意欲、などなどその存在感は他の追随を許しません。
ここ最近、北斎の展覧会が多数開催されるなか、『北斎漫画』にスポットをあてた展覧会が開かれています(5月29日まで)。
本展の見どころを水野美術館の学芸員、髙田紫帆さんにうかがいました。
「葛飾北斎と言えば、世界中で最も愛される江戸の浮世絵師ですが、信州とのつながりで特筆すべきは、北斎と小布施とのゆかりでしょう。初めての訪問は今から180年前の天保13年だといわれ、その後亡くなる直前まで計4度も訪れたと伝えられています。
そして当時、北斎の大ヒット作として出版され続けていたのが『北斎漫画』です。はじめは、孫弟子を含め200人以上もいたという門人たちに向けた絵手本でしたが、庶民の心もがっちり掴み、北斎没後の明治11年まで全15編が刊行されるほどの大ベストセラーとなります。その人気の秘密は、カメラのシャッターさながらに一瞬を捉えることのできた北斎の驚異的な眼、そしてずば抜けた描写力にありました。例えば《風のいたずら》では、吹きすさぶ突風に翻弄される人々の姿がユーモアたっぷりに切り取られています。
本展では、世界一の質と量を誇る浦上満氏の『北斎漫画』コレクションより、厳選した約200点でその魅力を余すことなくご紹介します。北斎ファンにとって聖地でもあるこの信州で、森羅万象のあらゆるものを描き出した『北斎漫画』の多彩な世界に浸ってみてはいかがでしょうか」
北斎漫画の決定版といえる展覧会です。ぜひ会場でご堪能ください。
【開催要項】
浦上コレクション 北斎漫画―驚異の眼・驚異の筆
会期:2022年4月9日(土)~5月29日(日)
会場:水野美術館
住所:長野市若里6-2-20
電話:026・229・6333
開館時間:9時30分から17時30分まで(入館は17時まで)
休館日:月曜日
公式サイト:https://mizuno-museum.jp
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝