取材・文/池田充枝

19世紀後半、欧米で異国への関心が高まっていた時期、明治政府は殖産興業政策の一環として陶磁器の生産を強化し、各国に紹介しました。この時期に創業した森村組とのちに森村組が設立した日本陶器は、欧米のニーズをいち早く取り入れ、多様な陶磁器を売り出しました。いわゆる「オールドノリタケ」は、この時期に製作・販売・輸出された陶磁器をさします。

「白盛花唐草文瓜型花瓶」 制作年不詳 ※以下作品はすべて若林コレクション

多種多彩な技法を駆使し、時代の流行をいち早く取り入れた様々な器種は人気を博し、第二次世界大戦期まで、欧米の人々を魅了しました。その日本屈指のオールドノリタケコレクションである「若林コレクション」から優品を選んだ展覧会が開かれています(5月29日まで)。

「色絵盛上カワセミ付小物入」 1911~21年頃

本展の見どころを兵庫陶芸美術館の学芸課、萩原英子さんにうかがいました。

「欧米の趣向を敏感に感じ取り、次々に新しいデザインを考案して生み出された陶磁器の数々。『色絵金盛薔薇文飾壺』は、19世紀末から20世紀にかけて欧米を席巻したアールヌーヴォーと呼ばれる美術様式の影響を受けて生み出された作品です。

「色絵金盛薔薇文飾壺」 1891~1921年頃

古代ギリシャに起源をもつアンフォラと呼ばれる形状の壺の胴部には、ピンク色と白色薔薇が手描きで丁寧に描かれています。その周囲には、泥奬(粘土と水を混ぜ合わせて泥のような液体状にしたもの)で文様を盛上げた上から金彩を施す金盛の技術で華やかな装飾を施しています。この技法はオールドノリタケの代表的な装飾技法の一つです。

「色絵金彩婦人文蓋物」 1920~30年頃

こうした装飾豊かな壺や花瓶に加え、1910年代から30年代にかけて、装飾や美術、ファッションなどの分野で流行したアールデコ様式を取り入れて作られた色鮮やかな食器や化粧道具、喫煙具など、バラエティーに富んだ作品を展示しています。オールドノリタケの多種多彩な意匠、技法、器種の数々をぜひお楽しみください」

「色絵食器揃(フランク・ロイド・ライト デザイン)」
 1923~40年頃

なんと建築家フランク・ロイド・ライトがデザインした食器を見ることができます! 見どころ満載の展覧会です。

【開催要項】
オールドノリタケ×若林コレクション―アールヌーヴォーからアールデコに咲いたデザイン― 
会期:2022年3月19日(土)~5月29日(日)
会場:兵庫陶芸美術館
住所:兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4
電話:079・597・3691
開館時間:10時から18時まで(入館は17時30分まで)
休館日:月曜日(ただし3月21日は開館)、3月22日(火)
公式サイト:https://mcart.jp
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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