文/中村康宏、内本菜穂
心筋梗塞や脳梗塞といった血管系の疾病は、急激な温度変化により血圧が急上昇しやすい冬に増えることはよく知られています。そんな冬は血糖値も上がりやすい季節だということをご存知でしょうか?
冬場は血圧、コレステロール、血糖値が上昇しやすい傾向
血圧の他にも、2型糖尿病者の血糖値の指標である「HbA1c」やLDLコレステロールは冬場にコントロールが悪化する傾向があるとの研究結果が発表されています。※1(Diabetes care 2019)
この研究によると、HbA1cを安定化させるという目標の達成率は、夏の53.1%に対し、冬が48.9%となっています。さらに、血圧は夏の56.6%に対し冬は40.9%、コレステロールも夏の50.8%に対し冬は47.2%と、冬は夏より目標達成率が低いことが明らかとなりました。この研究から、冬場は血圧だけでなく、コレステロールや血糖値も上昇しやすい季節だということがわかります。
それでは、なぜ冬場に血糖値は上昇するのでしょうか?
・忘年会や新年会などのイベントが増える
イベント事が続くと、普段は頻繁に食べないケーキやごちそうを食べる機会が増えたり、「年末年始くらいは良いだろう」と気持ちが緩み、暴飲暴食が日常的になる方も多く見受けられます。
このような時期の食事は、特に好きなものに偏りやすく、気付けば糖質中心となり、血糖値を急上昇させ、その後の血糖値の急降下により空腹感が強く出てしまい、結果的に次の食事も食べ過ぎてしまうといった負のループに陥りやすいのです。
また、夜の外食に向けて調整をしようと考えることは良いものの、「朝食は抜いて、昼はスープだけ」といった極端な調整をされる方も多くいらっしゃいますが、そのような方法ではかえって夜の食欲を増加させ、血糖値を急上昇させてしまう原因となります。
・寒さから外出の機会が減り運動不足に
日本では、成人のおよそ3人に1人の割合で運動不足という状況です。※2(WHO 身体活動に関する世界行動計画2018)
そこに寒さという季節的な条件も加わり、外出するのが億劫になり家で過ごす機会が増えるため、日常の活動量が少なくなりがちです。
・自宅で過ごす事が多くなり間食が増える
冬場は外出の機会が減り、自宅で過ごすことが多くなると、ついつい間食が増えてしまいがち。テレビを見ながらお菓子を食べたりと、気付けば間食が日常化している方も多いです。間食が多くなると、砂糖の摂取量が増えてしまいますが、砂糖には、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」の分泌を促す働きがあり、一時的な快楽から日常的に甘いものを欲する「砂糖依存」となり、間食せずにはいられないという状態になってしまうことがあります。
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