関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

***

いるはずがない東京駅に嫁がいた

今回の依頼者は、中村茂子さん(仮名・65歳)です。名門女子大学を卒業しており、知的で落ち着いた口調の方で、ボブの黒髪に紺のスーツが似合うステキな女性です。

「主人にも相談できなくて……」と、かなり思いつめた表情をしており、茂子さんが口を開くのをじっと待ちました。

美しい所作でお茶をひと口飲むと、重い口を開きます。

「先日、主人と私が東京駅を歩いていると、息子の嫁が知らない男性と腕を組んで歩いているのです」

つまり、茂子さんは、義理の娘さんの不倫現場を見てしまったということ。

「そこはたまたま新幹線の改札口で、その男性と嫁は、抱き合って別れたのです。いわゆるハグ……と言うのでしょうか、ああいう友達同士が、ポンポンと抱き合うような感じではなく、手を握りべったりした感じでした」

その日は、夫婦で会合に出なければならず、急いでいたのでスルーをしたそう。

「息子の嫁はおとなしいタイプで、奔放な感じの人ではないんです。どちらかというと、地味で落ち着いている。でも、私は何かが気に入らなくて、結婚の時にあまりいい顔をしなかったんです。そのせいで、息子たちが結婚してから7年間、ちょっと距離を置かれています」

茂子さんには3人の息子がおり、長男はIT関係の企業に勤務しており、現在は海外にいるとのこと。次男は建築関係の仕事をしていて、こちらも多忙で地方にいる。長男・次男とも独身。今回、問題になっているのは、通信関連会社に勤務する末っ子の息子(35歳)の妻のこと。

「息子が同い年の嫁と結婚したのは、28歳の頃でした。出会ったのは大学時代のバイトと言っていたのですが、長男から聞いたら、ネットゲームで知り合ったそうです。何事も古臭い私たちに言うと心配するから、そう言ったようなんですよね」

もともと、嫁は東海地方でも不便なところに住んでおり、結婚を機に東京に来た。

「息子よりもゲームが得意だそうです。最初はおどおどしていたのですが、結婚の翌年から立て続けに孫が3人生まれてからは、堂々とするようになりました。今、孫は6歳、4歳、2歳で、全員女の子です」

そう言って、笑顔を浮かべて写真を見せてくださいました。そこには品がよく整った顔立ちの女の子がお揃いのワンピースを着て笑っています。

【1年前から、孫娘を預かる頻度が増えた……次ページに続きます】

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