関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者・桂子さん(仮名・62歳)は「たまたま見た夫の日記に浮気の記述があって…」と私たちの事務所にいらっしゃいました。
「夫婦生活」がなく30年、深まる絆と信頼感
桂子さんと夫は、結婚35年。2人の子供に恵まれ、それぞれが独立しています。夫の日記から、浮気を察知したとのことですが、いったい何があったのでしょうか。まずは、夫婦関係について伺いました。
「夫が30歳、私が27歳の時に結婚しました。夫は兄の高校の同級生で、私は中学生の頃から彼を知っていた。ウチで夕飯を食べることも会ったし、互いを知っていて、私は夫のことが好きだったんですね。なんというか自然に夫婦になりました。いわゆる“お付き合いする”という期間は1年くらいだったのですが、すぐに息子が生まれ、娘も生まれました」
家事や育児に積極的に参加し、桂子さんをいたわる夫。夫は中堅の製薬会社に勤務し、桂子さんはパートで始めた印刷会社の経理から、正社員に昇格。共働きを続け、子供二人も成人した。
「下の娘が高校に進学し、親離れしてからは、夫婦2人の時間が楽しくて。会社帰りに待ち合わせて食事をしたり、ナイトミュージアムで美術鑑賞したり散歩したり……コンサートやオペラにも行きましたね。夫も頭も薄くなり、お腹も出てきたけれど、だからこそいいと思うことの方が多かったです。老いの伴走者というか……」
そうおっしゃる桂子さんですが、小柄でほっそりしており、グレイヘアを素敵にアレンジしている。肌の艶もよく、黒×ピンクのベレー帽をおしゃれにアレンジしており、50代半ばに見えます。
「若く見えるとはよく言われますけれど……夫との問題があるとしたら、かれこれ30年以上、夫婦でないことでしょうか。いわゆる夜がないのです。私たち夫婦は淡泊というか、若い頃から、そういうことがそれほど好きではないのです。ですから、下の娘が産まれてからは、同じベッドに寝ていても、そういうことから遠ざかっていました。気づけば30年経っていましたが、今回の日記で冷水を浴びせられたような衝撃がありました」
【薬を使ってでも、彼女が欲しい。そんな夫の記述に心が壊れそう……次のページに続きます】