関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
厚生労働省所管の独立行政法人「労働政策研究・研修機構」のまとめによると、1995年あたりから「専業主婦」世帯と「共働き」世帯の数は逆転した。その差は徐々に開いており、2021年の最新データを見ると、専業主婦世帯は566万世帯だが、共働き世帯は1247万世帯と2倍以上にもなっている。
専業主婦の定義は、家事・育児に専念し、税制上課税所得に達せず、扶養家族としてみなされる妻のことだ。つまり、夫の収入で生活しており自由になるお金が少なく、時間も限られているから、浮気へのハードルが高いと推測できる。
今回の依頼者は「帰宅すると家に異変があるんです」という恭平さん(60歳)だ。12歳年下の48歳の妻の行動に不審な点があるのだという。
12歳年下の妻のほうから押しかけて来た
恭平さんの第一印象は、「やり手社長」。堂々とした体格、黒々と染めた髪、海外の有名ブランドのパーカーを着こなし、ハイブランドのバッグを持っています。車のキーを見ると、誰もが憧れるドイツ車のロゴが輝いていました。
「探偵にまた依頼するとは思わなかったですよ」と大きな声で笑っており、相当動揺していることを感じました。男女ともにそうですが、浮気は相手の心に大きなダメージを与えます。結婚するということは、お互いにパートナーとして尊重すること。そこに別の相手と肉体関係を持つということは、相手をないがしろにすることであり、心に深い傷を負わせることでもあると感じています。
私たちのカウンセリングルームで涙を流す人もいますが、恭平さんのように笑う人もいます。相手の浮気を受け止めるには、激しい感情表現を伴わねばならないのだといつも感じます。
まずは、妻とのなれそめについて伺いました。
「結婚して5年です。私たちは再婚同士で、あるカリスマ経営者が主宰する開運塾のようなサークルで出会いました。私はこの開運塾のサポーターのようなことをしており、“この先生の言う通りにしたら、年収が億になりました”と言っていると、妻のほうから近寄ってきたんです」
妻の写真を見せてもらうと、ふっくらした体型に、ゴージャスな巻髪、パッチリした目をしています。いわゆる自己肯定感が高い女性だと感じました。
「そうなんです。あいつは自分に自信がある。俺もぐいぐいくる女は嫌いなんだけれど、気が付けば押し倒されていました。出会いから半年後、43歳のときに結婚したんです」
恭平さんの豪邸に転がり込むように、結婚生活がスタート。
「もともと、妻はメディア関連の人に女の子をあっせんしたり、読者モデルのようなことを行っていたんですが、“専業主婦になりたい”というのでOKしました。開運塾でわかったのですが、妻は男性にモテる。40代のオバサンなのに、20代の男どもがポーッとなっているんです。それに、俺も一人の家に帰るのが嫌になっていた。それに、みんながいいと思う女(妻のこと)を手に入れ、ぎゃふんと言わせたかったというのもあります」
恭平さんに前妻のことについて伺うと、「男を作って出ていきました。結婚生活は5年くらいだったかな。探偵に居場所を突き止めさせて、離婚しました」と他人事のように語っていました。
【家に男を連れ込んでいるのではないか……次のページに続きます】