文・写真/青山尚暉

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スイッチひとつでわずか13秒で開閉できる電動「リトラクタブルハードトップ」を採用し、美しいクーペと爽快なライトウェイトオープンスポーツのどちらも楽しめる「ロードスター RF」を駆って訪れた、初春の伊豆半島。

最初は流麗なクーペスタイルで東名高速道路を疾走し、ハードトップを開け放っては、空と一体になって伊豆半島の山道を駆けめぐり、そして伊豆河津温泉郷の谷津温泉にある明治6年創業の名旅館『離れ家 石田屋』に立ち寄ったあとは、海沿いの道を進み、今回のドライブの目的地である『今井浜 東急ホテル』へと向かった。

そしていよいよ今井浜に到着! 和の老舗旅館にお似合いだった「ロードスター RF」は、老舗リゾートホテルのエントランスに乗り付けるのにもぴったり。美しさと実用性を兼ね備えた、大人のクルマであることを実感した。

翌朝、伊豆の海を琥珀色に照らす朝陽をホテルの客室から眺めていると、ボクの中で若かりしころのロードスターとの思い出が走馬灯のように駆けめぐってきた。そして今、「ロードスター RF」を当時とほとんど変わらない風景の同じ伊豆の道でドライブできる幸せが込み上げてきたのだった。

ホテルをチェックアウトすると、往路乗ってきたVSの6ATではなく、RSの6MTに乗り込んで、横浜への帰路についた。

往路は東名高速道路沼津ICから伊豆半島を一気に南下したが、復路は「ロードスターRF」にうってつけの山道やワインディングロードが続き、めくるめくスポーツドライビングが楽しめる伊豆スカイライン~マツダ ターンパイク箱根~小田原厚木道路を経由して横浜を目指すルートを選択した。

「ロードスター RF」をドライブして感動したのは、ペダル配置の自然さだ。足を伸ばせばまっすぐそこにペダルがある。当たり前のようだが、そうしたレイアウトや運転姿勢にまでこだわるクルマは、意外に少ないのである。

加えて6MTのクラッチの操作性の良さがある。軽い、重いというより、左足の操作力、ミートポイントが実に自然。だから腰回り、左右の足が疲れにくいのだ。

実際、「ロードスター RF」 RSの6MTを走らせた帰路、およそ180キロの行程を1人で運転したのだが、途中の渋滞を経験してもまったく疲れを感じなかった。「スポーツカーは運転して疲れる」という俗説は、この「ロードスター RF」には通用しない。もちろん、ショートストロークが気持ちよく確実に決まるシフトフィールも、文句なしのタッチと言える。

「ロードスター RF」は、初代ロードスターに熱狂したボクのような年代の人、これまでオープンスポーツをあきらめていた人にもぜひ乗っていただきたい、大人に似合う、格別に美しいクルマだ。そのことを、復路でも今一度強く実感したのである。

さて、伊豆への往復で「ロードスター RF」楽しみ尽くしたボクだが、個人的に気に入ったのは、VSの6ATである。何よりも走り全体が軽やかで扱いやすく、乗り心地にしても俄然しなやかだからだ。

ロードスターと言えばMTで乗るもの、というイメージが、一般的には根付いているが、このRFと6ATの組み合わせは、ゆったり流しても、スポーティーに走っても秀逸。パドルシフトも備わり、シフトアップ、シフトダウンの気持ち良ささえ味わえた。一方、専用サスペンションを持つRSは、イケイケなスポーツ度、ハード目の乗り味が際立つ仕様だった。

今から28年前の1989年当時、初代ロードスターに熱狂し、国内最高峰のワインディングロードを抱く伊豆スカイラインを走りたいがために伊豆へのドライブを重ねたボクも、今ではシニアと呼ばれる世代になった。でも、人間が歳を重ねるように、1台のクルマ、ロードスターもまた、30年近く進化し、存在し続けている。この事実は、国産スポーツカーとして驚異的なことである(だから世界中に多くのファンがいて、同好者のクラブが存在するのだ)。

タイトなコクピットに身を沈め、ピタリと決まるドライビングポジションに満足しつつステアリングを握る。爽快痛快なドライブを楽しんだら、リトラクタブルハードトップを開け、澄み渡った大きな空を見上げる。そうすれば、若かりしころの自由と夢と希望に溢(あふ)れていた自分に戻れるようだ。

出会ったころ、初代RX-7のMTに乗っていたカミサンと、今では夫婦2人っきりになったわが家にも、「ロードスター RF」はぴったりだ。「もう一度、スポーツカーに乗りたい、オープンカーに乗りたい」と思わせるクルマ。最新先鋭のテクノロジーとデザインに裏打ちされた「マツダ ロードスター RF」からは、そんな強い印象を感じた。

【マツダ ロードスターRF RS】
■全長3,915×全幅1,735×全高1,245mm、ホイールベース2,310mm
■エンジン/1,997cc 158ps/6,000rpm 20.4kg-m/4,600rpm
■使用燃料/無鉛プレミアムガソリン
■最小回転半径/4.7m
■トランスミッション /スカイアクティブ6MT
■価格/373.68万円(税込み)

【伊豆今井浜 東急ホテル】
■住所/静岡県賀茂郡 河津町見高今井35-1
■電話/0558-32-0109
チェックイン14時(ホテル直接予約の場合)/チェックアウト11時
■1室2名利用、1泊2食付きひとり2万1600円~(プランによって異なります)。全134室。
https://www.imaihama-h.tokyuhotels.co.jp/ja/index.html

文・写真/青山尚暉(あおやま・なおき)
モータージャーナリスト/ドッグライフプロデューサー。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。自動車の試乗レポートを専門誌、一般紙、webに寄稿するとともに、ドッグライフプロデューサーとして小学館「PETomorrow」などで快適安全な「わんこと行くクルマ旅」を提案中。

痛快な“人馬一体感”に思わず頬がゆるむ!「マツダ ロードスター RF」で早春の伊豆へ【前編】

 

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