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ブリヤート共和国:日本の教科書にも旅行ガイドブックにも載っていない、極端に極彩色なロシアの旅(パラダイス山元の旅行コラム 最終回)


夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。木曜日は「旅行」をテーマに、パラダイス山元さんが執筆します。

文/パラダイス山元(ミュージシャン・エッセイスト)

ロシア・ブリヤート共和国にはロシア正教の教会以外に、チベット仏教の寺院もあります。まつられている像の横に並んでみましたが、色彩的には違和感がありません。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

幼少の頃から、「北方領土を返せー」と街中をヒステリックに絶叫して回る街宣車と、なまめかしくも明るい女性の声で「天狗レズビアン(秘)残酷白黒ショーは明日からで〜す」と連呼するストリップ劇場のワンボックスカーが行き交う北海道札幌で育った私。

中学生くらいまでは、なんか賑やかなクルマが走ってきたぞー、くらいにしか感じていなかったのですが、だんだんとこういうのを野放図にしている街自体に嫌悪感が芽生えてきました。

北海道民からすれば、南樺太も北方領土も、戦後どさくさにまぎれて侵攻してきたソ連軍が勝手に領土にしてしまった土地。ロシア人に対して、うらみこそあっても、親近感なんて湧きもしませんでした。続く200海里問題など、子どものうちからソ連は悪みたいな、立派な洗脳にあってきました。

上京し大人になって、サンバのライブショーが毎夜繰り広げられている都内のライブハウスに行きました。テレビでしか見たことのないカーニバルの山車(だし)の上で踊っている、いかにもブラジル人というムチムチの女性に混じって、真っ白な肌で、応接間のアップライトピアノの上に飾ってあるお人形さんのような細身の女性が踊っていました。

その女性が終演後、派手なサンバの衣装から、こざっぱりしたワンピースに着替えて客席にやってきました。

「どこの国の方ですか?」

「ロシアのブリヤート共和国です」

「えっ、ロシアの中に、また別に国があるんですか?」

「シベリアのバイカル湖の近くです、地図でいうと右側です」

私は、このとき初めて「ブリヤート共和国」と耳にしました。でも、それから20年以上、一度も耳にすることはありませんでした。

前回の当コラムに書いた、キルギス共和国からの招聘打診要請からしばらく音沙汰がなかった外務省から、久しぶりに連絡がありました。

「山元さんを探している国があります。今度は、ロシア連邦ブリヤート共和国ウラン・ウデ市です」

無茶なことを企てたがるバラエティー番組のプロデューサーの声に聞こえます。

なんでも、山形市とウラン・ウデ市は姉妹都市関係にあるものの、国家間の諸問題のあおりを受けて、なかなか交流が進んでいなかったとのこと。そんな中、サガンハラという伝統的な冬の行事に、日本のサンタクロースをぜひとも招待したいとのこと。

「渡航費とか出そうですかね?」

「わかりません」

「キルギス共和国に行ったときは自腹でしたが」

「なら、今回も自腹かもしれませんね」

「山形市長、市役所の職員さんとかは同行されませんか?」

「パラダイスさんおひとりしか招待されていません」

とくに、ロシアに興味があるわけでもなく、山形市ともご縁がありませんでしたので、これは行ったほうがよいものか、キルギス訪問の際にもいろいろありましたので、念には念のため、デンマークやスウェーデンの長老サンタさんにお伺いをたてたところ

「我々は招待されていない。自分には関係ないから、ユー自身で判断しなさい」

とのこと。

渡航ビザ申請など、出発までに残された時間はほとんどなく、もし断って、日本とロシアの現状の関係に水を差すようなことがあってはならないという、高度な政治的判断、というかパラダイス的判断で渡航を決断しました。

ウラン・ウデ市までは、稚内からフェリーでサハリンへ、海路と陸路で移動し、シベリア鉄道で一本と聞きましたが、とてつもない時間がかかります。成田から空路、モスクワのドモジェドボ空港まで行って、半分以上引き返すようなルートが非効率ながらベストのようです。

ウラン・ウデ市の市庁舎前には巨大ツリーと……。(撮影:パラダイス山元)

あまりにも巨大すぎるレーニンの首が!(撮影:パラダイス山元)

ウラン・ウデ市の街中。マイナス30度でも風船は割れないんです。(撮影:パラダイス山元)

日本からの中古車をいたるところで目撃。日本のロゴが入っているだけで、価値が上がるとか!(撮影:パラダイス山元)

ウラン・ウデ市庁舎を訪問して、ようやく事の重大さに気がつきました。

主賓扱いです。

それも完全な主賓。

紹介される時も、真っ先に。

終身名誉理事長とかでもないのに……。

サンタクロース以外は何者なのか? これまでの経験を振りかえっても、どうにも理解できない、ゲームの中のキャラクターのような方がほかに3人……。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

ウラン・ウデ市内の施設に行くと、みんなオメカシして待ってくれていました。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

どこへ行っても大歓迎。

もしかしたら、みんな日本のこと好きなのかな?

ブリヤート人は、ロシア人との混血も進んでいるものの、300年以上前にロシアに属することになってからも、独特の民族構成のようです。日本人の遺伝子とかなり近いとのこと。私が、もしこの街で暮らしたとしても、まったく違和感ないのでしょう。

いや、ロシアのみなさん、ほぼ100%親日家じゃありませんの!?

日本のこと大好きみたいですし、なにより、よく来てくれたと、おもてなしが極端すぎます。食べきれないほどの餃子にお菓子、歌に踊りと、心打たれる演出のオンパレードです。

↓バイカル湖畔で、地元の子どもたちに混じって雪中運動会。


↓ブリヤート民族の歴史がわかる野外展示博物館・ザバイカル民族学博物館に行きま
した。
日本人と見間違うほど、ブリヤート人は日本人に似ています。


ブリヤートの民族衣装。帽子などはモンゴルに近いものがありますが、とにかくギンギラの生地でド派手です。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

馬も、かわらしく極彩色の飾りをまとっています。(撮影:パラダイス山元)

豚の皮を張った民族打楽器で、マンボのリズムを叩かせてもらいました。みなさんポカーン!(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

 

↓ブリヤート共和国最古のロシア正教の教会は修繕中でした。鐘を奏でる少年。

教会の内部はフツーに写真を撮ってもまるで絵画のよう。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

ロシア国内は、ロシア正教だけかと思っていましたが、チベット仏教、ラマ教、イスラム教、さらにローカルな宗教と実に様々であることがわかりました。お隣の国のことなのに、ぜんぜん習ったことありませんでしたからね。

チベット仏教の寺院前には、過去型・猫型ロボットのようなものが……。(撮影:パラダイス山元)

チベット仏教のお寺の中にて。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

現在もご存命、ご活動中の、あのダライ・ラマ14世も、もちろんまつられています。(撮影:パラダイス山元)

それにしても、私がロシアのことを知らなさすぎました。戦後、ソ連全土で50万人以上の日本人が捕虜になっています。

ここウラン・ウデには、ソ連軍がつくったラーゲリと呼ばれた強制収容所が23か所もありました。抑留を余儀なくされた日本人捕虜が1250人以上もここで亡くなっています。日本人墓地もあちこちにあります。

しかし、逆の立場で考えると、抑留は単なる悲劇ではなく、「日本人には本当に感謝している」となるのです。

シベリア鉄道や道路の敷設も、バイカル湖の護岸工事も日本人が担ったものです。強制労働の記録を読むと、悲惨を極めていたことがよく理解できます。

氷結したバイカル湖の真ん中まで、警察車両で移動しました。「小樽の◯◯寿司はおいしいんだろう?」など、警察官はかなりの親日派。私の知らない北海道のお店のことまで知っていました!(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

ロシアのゆるキャラ、ヤバイです。ヤバすぎます。(撮影:ウラン・ウデ市の職員)

日本からのサンタクロースとしてブリヤート共和国へやってきた私でしたが、この連載の最後を飾るにふさわしいミラクルな出会いがありました。

餃子のルーツが知りたくて海外を旅していた私ですが、ブリヤート共和国に入ってから、実は毎日、餃子を食べていたのでした。ホテルの朝ごはん、イベント最中のランチ、そしてディナーと3食すべてに餃子や、餃子っぽいものが出てくるのです。

えっ、サンタクロースと餃子? ウラン・ウデ市内のファーストフードレストランのメニューボード。餃子に近い、ロシア国内ではポピュラーなペリメニ。(撮影:パラダイス山元)

「これは、中国から渡ってきた食べものですか?」

と尋ねると、

「これはブリヤートの伝統料理“ブーザ”で、中国のものなんかじゃない」

と、誰に聞いても語気を強めるのでした。

皮の中は、豚肉と玉ねぎがほとんどでした。日本と同じく焼き餃子、蒸し餃子、揚げ餃子があって、カタチは日本の餃子と同じ三日月形から、上に口が開いた小籠包のようなものまで多種多様。

真上に穴が開いた状態のブーザ。 (撮影:パラダイス山元)

まさか、餃子のルーツがここ、ブリヤート共和国だったとは! 導かれたのは運命としかいいようがありません。

歌い、踊り、そして包む、ブリヤート共和国のおばあちゃんたち。(撮影:パラダイス山元)

民族衣裳をまとって歌い踊るおばあちゃん達がつくった揚げ餃子は、カタチも美しく、皮もサクサク、中はお肉ギッシリで、とても美味でした。(撮影:パラダイス山元)

新聞で見て、日本から来るサンタクロースにどうしても会いたかったというおばあちゃんに会いました。

第二次世界大戦終戦直後は、まだ小学校入学前の小さい子どもだったといいます。日本兵と遊んだこともあったし、そのときに日本語も教えてもらったというのです。日本人と日本語でしゃべるのは、それ以来初めてだとか。

日本とロシアの間には、様々な問題が未解決なままです。領土の返還、平和条約の締結がなにより大事かと思いますが、国民レベルでの理解も深めていかねばならないと改めて感じました。

ますます両国の交流が深まることを期待しています。

なお、算定基準はよくわからなかったのですが、帰国直前に片道分の交通費がロシアルーブルで手渡されたのでした。トナカイのソリが自由に使えない身としては、大変ありがたいことでした。

↓ブリヤート共和国での出来事あれこれを総集編で。
動画の最後に、日本語を話すおばあさんが出てきます。

文/パラダイス山元(ぱらだいすやまもと)
昭和37年、北海道生まれ。1年間に1024回の搭乗記録をもつ飛行機エッセイスト、カーデザイナー、グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロース日本代表、招待制高級紳士餃子レストラン蔓餃苑のオーナー、東京パノラママンボボーイズで活躍するマンボミュージシャン。近著に「なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?」(ダイヤモンド・ビッグ社)、「読む餃子」「パラダイス山元の飛行機の乗り方」(ともに新潮文庫刊)など。

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