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【夕刊サライ/パラダイス山元】ドイツ・ガッゲナウ:男のマロンを掻きむしられるほど極端なクルマに乗りに行く旅(パラダイス山元の旅行コラム 第6回)


夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。木曜日は「旅行」をテーマに、パラダイス山元さんが執筆します。

文/パラダイス山元(ミュージシャン・エッセイスト)

日本一とか、世界一とか好きですよね、日本人って。

モノでも、人でも、ズバ抜けたもの、極端なものを志向してしまうのは、実は日本人の血の根底に脈々と流れていることなのかもしれません。自らが達成できなくても、その偉業を成し遂げた人や、モノ・コトを賞賛すること、寄り添うことで、美酒に酔うみたいな感覚を得るのは日本人独特のようです。

夢も希望もあったはずなのに、日々の生活に追われ、やりたいことも満足にやれず、気がつけば白髪が目立つようになってしまった、とうとう部分入れ歯かよ……と嘆く私の世代。私も当然含みます。

男の夢とか、男のロマンを、真顔で友と語り合っていたのは、いつ頃までだったでしょう。

2018年6月、メルセデス・ベンツの多目的作業用トラック『ウニモグ』の歴代モデルが並ぶ『ウニモグミュージアム』(ドイツ・ガッゲナウ)に行ってきました。 (撮影:パラダイス山元)

1987年、東京・晴海で最後に開催された「第27回 東京モーターショー」開幕前夜、SUBARUのメインターンテーブルには『F624 ESTREMO』というコンセプトカーが鎮座していました。

「山元!! オマエ、そんなに強くこするな、チカラ入れるな、ボディが凹むだろ!!」

上司からゲキが飛びます。そう、開幕前夜に、若手デザイナーたちが、クルマ磨きを手伝わされていたんですね。そもそも、どこかの事務所に丸投げして、ハリボテの実車モデルまで造らせた、ひょうたんのような丸っこいコンセプトカーに対して、愛情もへったくれもありませんでしたから、「なでるように磨く」ではなく、なんかついゴシゴシやっちゃっていたんでしょうね。

当時、業績が崖っぷちだった会社は、その翌年、『レガシィ ツーリングワゴン』の投入で、世界最高水準の4WD乗用車メーカーとして認知され、その後は世界中にファンを拡大していきました。

一方で、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリと、モーターショーのターンテーブルでしか目にできなかった夢のクルマたちが、今ではあたりまえのように街中を走っています。ニッポンすごい!

かつてスーパーカーを取り囲んでいたカメラ小僧たち(私も含まれます) の現在の愛車は何かしら? ちゃんとスーパーカーに乗っていますか? まさかのまさか、ワンボックスや軽自動車じゃありませんよね!?

『ウニモグ』といえばこれ。世界中で最も活躍している形式 U1450。私は、どちらかというと、F1マシンとかスーパーカーよりも、働くクルマ推し派なのです。 (撮影:パラダイス山元)

世界一の4WD車といえば、「多目的動力装置」(Universal Motor Gerät)といわれ、軍用車としても使われているメルセデス・ベンツの『ウニモグ』でしょう。見かけはトラックなのですが、45度の傾斜を登ったり、ありえない悪路もなんのそのというモンスターマシンで、過去にはパリ・ダカールラリーにも伴走車として出場しています。

『ウニモグ』の生産拠点があったドイツ・ガッゲナウに『ウニモグミュージアム』があります。『ウニモグ』の歴史を網羅した実車の展示、あらゆる資料が集められた屋内展示のほか、男のマロンを掻きむしられるほど魅力的な試乗コースが完備されています。あっ、マロンではなくロマンです。

というわけで、世界一の4WDを堪能する極端な旅に出かけることに。

メルセデス・ベンツのガッゲナウ工場 にて。(撮影:通りすがりのおばあさん)

フランクフルト空港から、ガッゲナウまでは、レンタカーで約2時間。一番左の追越車線を時速200km超えのクルマがビュンビュン走る5号線を、一路南下します。

ドイツの高速道路といえば、アウトバーンと呼ばれ、速度無制限というイメージがありますが、交通量の増大や経年変化による路面の傷みが激しく、至るところで、長い区間を車線規制した大規模な舗装工事が行なわれています。猛スピードで追い抜いていったクルマが、工事渋滞にハマって、また隣や前を走っているという、ほほえましいことが移動中に何度もありました。海外での運転は、なにより安全第一ですね。

『ウニモグミュージアム』に到着したと同時に、急に雲行きが怪しくなりはじめました。最初に出迎えてくれたのは、映画『トランスフォーマー』に登場した劇中車の『ウニモグ』。(撮影:パラダイス山元)

行きたかったところへ来られた喜びに、暗雲立ち込める演出のような空模様があいまって、気分は最高潮。YouTubeや公式WEBサイトで、どんなところかあらかじめ観て知っていたとしても、こういったタダの観光名所ではないホットスポットは、実際に辿り着いてみないと、本当の価値がわかりません。

到着した瞬間、こみ上げてくる男のマロンを抑えることができなくなりました。スミマセン、ロマンでした。

今の時代、なんでもかんでも差別と捉えられてしまう傾向がある状況で、あえて声を大にして言いたいです。

「男には、男のロマンがある!」。マロンじゃありません。

『ウニモグミュージアム』に展示されている初期モデルは、今でも一発でエンジンかかります。スゴイ!(撮影:パラダイス山元)

丸くても、四角くてもカワイイ『ウニモグ』。(撮影:パラダイス山元)

『ウニモグミュージアム』には子ども連れ、若い女性も大勢訪れていました。

性別だけでなく、言語、習慣など、あらゆる面で違いがある、世界のすべての地域において、そんな違いをすんなり受け入れて活躍している『ウニモグ』。その寛容性に共感を呼び起こすような展示にブラボー!です。

ミュージアムの売店には『ウニモグ』のペダルカーまであります。欲しい……。(撮影:パラダイス山元)

結局丸々2日間、『ウニモグミュージアム』の方も目を丸くしていたほど、ここで夢の時間を過ごしました。半日でも充分とは思いますが……。

↓『ウニモグミュージアム』での試乗体験
その1。

世界一の4WD車は、この程度の斜面は苦もなく登り降りできます。

カーデザイナーを志し、その夢が実現した後でも、こうして好きなものに触れられる喜びは大きいです。

『ウニモグ』は、見かけはゴツくても、荒くれ者といった風情は皆無で、目線が異常に高く感じるキャビンに乗り込むと、オーナードライバーのプライベート空間ともいうべき「ラウンジ感」、さらには「なごみ感」すら感じられます。

カタログや、聞きかじりの情報ではなく、その心地よさのすべてを体感できる。やはりここは『ウニモグ』の聖地、4WDとはなんぞやというものを実感させられる場所です。

↓『ウニモグミュージアム』での試乗体験
その2。

逆再生ではありませんよ、バックでも急坂を登り降りできるんです。

私が一番大好きな、線路を走る軌陸車の『ウニモグ』も展示されていました。(撮影:パラダイス山元)

イタリアの工業デザイナーの巨匠ジウジアーロ氏が、モックアップまでつくって富士重工業に売り込んできたラグジュアリークーペ『アルシオーネSVX』。その商品化担当デザイナーに抜擢され、とてもうれしかった記憶は今でも忘れられません。

ドアのサイドガラスまで湾曲した三次曲線に囲まれたクルマなんて、世界中どこ探してもありませんでしたから、もうこの自動車会社に入社できて仕事させてもらえているだけで、人生の目標のほとんどを達成してしまったかのような毎日でした。

しかし、本当に好きなクルマの形は、幼稚園児がよく絵に描くような直線のみで構成された、スクエアでシンプルな構成のクルマでした。それは、今でもまったくブレません。

結局、『ウニモグ』のペダルカーを購入。預け手荷物で空輸……、しかし預けられるのかどうか不安です。フランクフルト空港のエレベーターの中にて。(撮影:パラダイス山元)

尖ったエンスージアスト(熱心なファン)たちと、その思いを共有したい世界一好きが集まる『ウニモグミュージアム』へ! ぜひマロンを刺激しにいらしてみてください。

文/パラダイス山元(ぱらだいすやまもと)
昭和37年、北海道生まれ。1年間に1024回の搭乗記録をもつ飛行機エッセイスト、カーデザイナー、グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロース日本代表、招待制高級紳士餃子レストラン蔓餃苑のオーナー、東京パノラママンボボーイズで活躍するマンボミュージシャン。近著に「なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?」(ダイヤモンド・ビッグ社)、「読む餃子」「パラダイス山元の飛行機の乗り方」(ともに新潮文庫刊)など。

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