文/印南敦史

北海道沖の千島列島から北へと連なるカムチャツカ半島(ロシア)といえば、雄大な自然が残っているエリアだ。とくに夏の7〜8月にはピンクや紫の高山植物が一斉に咲き誇り、文字通りの絶景となる。そして、訪れた人の大半は虜になってしまうという。

かの地を知り尽くしたワールド航空サービス大阪支店のロシア営業担当、八百屋健太さんも、カムチャツカに魅せられたひとりだ。

「手つかずの自然、という言葉をよく耳にしますが、カムチャッカを訪ねると、これまで見てきた自然は、どこも人間の手が入っているように思えてしまいます。」(八百屋さん)

というわけで今回は、日本からわずか3時間半でたどり着ける、知られざるカムチャツカ半島の魅力をご紹介しよう。

手つかずの自然が残る豊かな大地


北緯57度に位置するカムチャツカ半島は、100を超える火山の造山運動によって独特の大地が形成されている。自然が残っているもうひとつの理由は、近代まで軍事拠点であったこと。そのため人の出入りが制限され、湾岸地域以外は開発の手が及ばなかったため、自然環境は手つかずの状態で残されることになったのだ。

火山地相とその裾野に広がる個性的な自然は、「カムチャツカの火山群」として世界自然遺産に登録されてもいる。夏に航空会社が直行便を運行しているのも、多くの観光客を魅了しているからに他ならない。

なかでも八百屋さんは、パラトゥンカ温泉郷に連泊し、標高2741メートルのアバチャ山中腹でフラワーウォッチングするのがおすすめだと語る。カムチャツカは高緯度なので、一般的には2000メートル付近まで行かないと見ることができない高山植物が、800〜1000メートルあたりで見られるというのである。

それどころか、ちょっと郊外に出ただけでも色鮮やかな景色が広がるというのだから、まさに高山植物の宝庫。1200メートルを超えると見ることができなくなる、レアな環境なのだ。

また、アバチャ湾から遊覧クルーズに出かけ、ウミガラスやパフィンなどの海鳥や、「カムチャツカ富士」と呼ばれるクリュチェフスカヤ山の雄姿を眺めることもできる。自然を、思う存分楽しめるというわけである。

ヒグマの聖地クリル湖で「ベアウォッチング」を

火山や高山植物もさることながら、ヒグマのウォッチングもカムチャツカならではの楽しみだというのだから驚かされる。というのも、自然に囲まれながら暮らすヒグマの数は、ロシアで最も多いといわれているそうなのだ。

なかでもペトロパブロフスク・カムチャツキーから南のクリル湖畔は、夏になるとサケを求めて多くのヒグマが集まる聖地なのだとか。

その姿をヘリコプターから確認できるというのだから、なんとも贅沢な話だ。もしかしたら、ヒグマたちが湖で荒々しくサケを獲る姿や、愛くるしい親子の姿も確認できるかもしれない。

宮沢賢治も訪れた樺太・サハリン

北海道の北、宗谷海峡を隔てて約43キロの対岸にあるサハリン島南部には、かつて日本の領地だった時代がある。特に訪れておきたいのは、樺太時代は豊原として樺太庁が置かれていたユジノサハリンスクだ。

その建物は現在も、日本建築の外観はそのままに、郷土資料館となっている。

他にも旧拓殖銀行豊原支店、樺太神社跡など、当時の面影を確認できるスポットが数多く点在する。

またサハリン島の南端にあるコルサコフは、「大泊」という旧日本名を持つ。かの宮沢賢治が最愛の妹亡き後にこの地を訪れ、さらに旧樺太鉄道に乗ってストロドゥプスコエ(旧栄浜)へ向かい、そこで『銀河鉄道の夜』の着想を得たと言われている。

近隣には「白鳥の停車場」の由来となった白鳥湖、賢治が訪れた旧王子製紙大泊工場跡などもあるので、宮澤賢治の物語世界を目の当たりにすることができる。

* * *

「私がカムチャツカを訪れたときには、ヴィストラヤ川をゴムボートで下りながら、ルアーフィッシングを楽しみました。なんと初めのキャストでググッと当たりがあり、第二投目でフィッシュオン、30センチオーバーのマスを釣り上げることができました。本格的な釣りの装備もなく、現地のスタッフにちょっとお借りした道具でもこれです。カムチャッカの自然の豊かさに驚かされました」(八百屋さん)

その気になればすぐにたどり着けるというのに、カムチャツカを旅してみようとはあまり思わないかもしれない。しかし実のところ、なかなか奥深い旅ができそうな地ではある。訪ねてみたい旅先として、候補に入れておきたい。

文/印南敦史
協力/ ワールド航空サービス(http://www.wastours.jp

 

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