5~6月といえば、日本はジメジメとした梅雨まっただなか。しかしフランスは、初夏の日差しのなかで花々と緑が美しく彩られる素晴らしい時期である。そこで注目したいのが、豊かな自然を存分に楽しめるフランス南西部のケルシー地方だ。
ケルシー地方の特徴は、起伏に富み、緑の森が広がっていること。またフランスからサンチャゴ・デ・コンポステーラへ続く巡礼路が通っているため、小さな村々やロマネスクの古い教会が点在している地域でもある。
「フランス一美しい田舎」と称えられることには、そうした地理的な根拠があるということ。そして特に魅力的なのが、初夏に美しさが最も際立つグレーの色彩の村コンクと、赤い村であるサン・シル・ラポピーだというわけだ。
コンクは、緑豊かな山中に、歴史を感じさせるグレーの色彩が印象的な村。対照的に、赤い家並みが美しいサン・シル・ラポピー。それぞれ特徴の異なる田舎の小さな村々を丹念に巡る旅は、極上の満足感を与えてくれることだろう。
ワールド航空サービスの南欧担当の鈴木さんに、この2つの村の魅力をお伺いした。
■1:コンク
コンクは「フランスの美しい村」のひとつ。緑の木々の間から顔をのぞかせる石造りのグレーや薄桃色の家並みが、初夏には最も美しいコントラストを見せる。
山間の隠れ家のようなこの村は、世界遺産のサンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の一部。そのため日中は多くの観光客で賑わうが、日帰りの客が去ったあとには、本来の静けさを取り戻す。
隠れ里らしい、静かな雰囲気を存分に楽しむことができるということだ。村の散策はもちろんのこと、スケッチ、写真撮影など、楽しみ方も多種多様だ。
サント・フォア教会東正面のタンパンは、「最後の審判」を表現した中世ロマネスクの最高傑作。早朝の日差しに輝くさまは見事で、まるで教会周辺の環境すべてが芸術作品のようである。
「コンクは山間にひっそりと佇む、中世から時が止まったような村です。グレーの屋根とベージュの壁が周囲の森と調和して、なんとも絵になります。」(ワールド航空サービス 鈴木さん)
■2:サン・シル・ラポピー
対するサン・シル・ラポピーは、「フランスの美しい村」として知られるだけでなく、「フランス人が好きな村」としても有名。100メートルの高さの断崖に、赤レンガと白い壁の家々が貼りつくように並ぶ景色が印象的だ。荒々しさとかわいらしさが融合したような、他にはない独特の雰囲気を醸し出している。
そして村に足を踏み入れると、そこはまさに中世そのもの。当時の建物が現存しているため、歴史がそのままの形で継承されているのだ。その光景を目の当たりにすれば、村全体が史跡に指定されていることにも十分納得できるだろう。
しかも初夏には、屋根の赤い色が陽の光に照らされていっそう映える。グレーを基調としたコンクとはまた異なった、爽やかな光景が広がるのである。
「路地歩きも実に楽しいのですが、崖上の村の全景を捉えるには、ロット川から村に上っていく途中で車を下りてどうぞ。こちらも見逃せません」(ワールド航空サービス 鈴木さん)
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以上、今回は初夏のフランスを旅するならぜひ訪ねてみたい、南仏ケルシー地方の美しい2つの村をご紹介した。
南フランスの小さな村をつぶさに巡り、ゆったりと流れる時間のなかで、その魅力を存分に味わう旅。それはまさに、大人ならではの楽しみだといえるだろう。
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文/印南敦史 写真提供/ワールド航空サービス