文・写真/佐竹敦

落合集落は、日本三大秘境の一つとされる「祖谷」(いや、徳島県三好市)にある、平家の落人が隠れ住んだと伝えられている山村集落です。国の重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれています。

そもそも祖谷地方は、日本三大秘境の一つとされ、日本有数の圧倒的な質と量の平家落人伝説が語り継がれている地です。

現在でも、源氏の追討軍が攻め寄せてきた場合に切り落として侵入を防げるよう、野生のシラクチカズラという植物の蔓を編んで架けたと伝えられている日本三奇橋の一つ「かずら橋」や、日本最古の軍旗といわれている「平家の赤旗」、源氏の追及を避けるために墓碑が建てられていない「平家の墓」など、平家落人伝説にまつわる伝説・伝承や史跡が数多く残されています。

まさに現在に残る隠れ里といった趣があります。

かずら橋

そんな祖谷にある落合集落の高低差は、なんと約390mもあるとのことです。東京スカイツリーには及びませんが、333mの東京タワーよりも「はるかに高い」ことになります。

そんな高低差を、一体どうやって集落内の人は行き来しているのでしょう?

実はこの落合集落は、谷沿いに通っている国道からは一切その姿を見ることができません。あらかじめその場所を知ってないと「たどり着くことは不可能」と思われるほどです。

まさに現在に残された数少ない隠れ里であり、桃源郷と言える場所です。

谷底の川沿いを走る国道(といっても酷道といった方が適当である)からは、落合集落のことを伺い知ることはできません。そもそもどこから落合集落に入ればいいのかもよくわかりません。何度も迷いに迷い、疑心暗鬼にかられつつ悪戦苦闘した末に、九十九折とおぼしき道を延々と登っていくと、ようやく落合集落にたどり着くことができます。

一体なぜこのようなところに集落が……。これぞ、まさしく隠れ里という趣きがあります。

しかしながら、落合集落の中に入って行ったところで、急傾斜地にところ狭しと「へばり付く」ように集落が形成されていることはわかるものの、高低差が390mもあるため、やはりこの落合集落の全容を把握することはできません。

逆に川を挟んで対岸の急傾斜地にある中上集落のことの方がよく見渡せます。そう、実はこの落合集落の全景を展望しようと思ったら、対岸の中上集落側から遠望しないとよくわからないのです。

では改めて、中上集落から落合集落を眺めてみましょう。

中上集落を登って行くと、色々なアングルで落合集落を遠望することができます。一番上には展望台も作られています。

一体この集落の人たちはどうやってコミュニケーションを取っているのでしょうか? 一番下の人が一番上の人に会いに行くだけでも大変ですよね……。この対岸から眺めた落合集落の景観は、にわかには信じられない圧巻の絶景です。

祖谷を訪ねても、有名な「かずら橋」までしか行ったことがないという人が大多数だと思いますが、ぜひそこからさらに足を伸ばして 、日本に残された数少ない本当の隠れ里である落合集落まで訪ねてみてはいかがでしょうか?

文・写真/佐竹敦
日本全国の即身仏・一之宮・五重塔・三重塔・滝百選・棚田百選・国分寺跡をすべて訪ね歩いた一人旅の達人。テレビチャンピオン滝通選手権出場。主な著書に「この滝がすごい!」「日本の滝めぐり」等。テレビ東京の「厳選!いい宿ナビ」のコラム執筆、@nifty温泉の記事執筆等、ライターとしても各メディアで活躍中。

 

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