取材・文・写真/白石あづさ
蒸し暑いイメージが強いベトナムだが、ホーチミンから国内線で1時間、軽井沢のように涼しく快適な高原がある。ベトナム人に人気の避暑地ダラットは、バラやガーベラなどの花の栽培が盛んな地だ。
今回は、ダラットの郊外にある花の栽培地と、一年を通して花が咲き乱れるダラット市ガーデンをご紹介しよう。
■花づくりが盛んなダラット郊外の栽培地
ダラットの郊外を車で走っていると、大型のビニールハウスが目に飛び込んでくる。高原野菜でも作っているのだろうか?と思ったら、「気候の涼しいダラットでは花の栽培が盛んなのです。特にバラは海外にも輸出するほど質もいいんですよ。ちょっと降りてみましょう」とガイドさん。
花農家の方のご好意で栽培の様子を見せてもらえることになった。幅15メートル、奥行き100メートルの大型ビニールハウスのなかには、美しい白やピンクのガーベラがすくすくと育っている。路地栽培だと蛾が来て花を食べてしまうため、最近はビニールハウスが主流なのだそうだ
その農家の周辺には集められた花々を選別し市場へと送る作業所がある。ここでは、バラの花をランク付けして束にし、市場や海外へと送るのだという。むせかえるバラの花の香りに包まれて、作業員が慣れた手つきでバラをより分けていく。
束にされたバラは、軽トラックにぎっしりと詰まれて出荷される。ベトナムというと、コーヒーやフルーツのイメージが強く、実は日本にも多くのベトナムがバラが輸出されていることを私ははじめて知ったのだが、帰国したら花屋でバラを見かけるたびにダラットを思い出しそうだ。
■ダラット市営のちょっと不思議なガーデン
郊外から市街に戻る途中に、3、4階建てのビルの高さほどある大きな半円形のグリーンが見えてきた。ダラット市が運営する「ダラット市ガーデン」の入り口である。
どうやって管理しているのだろう?と思わず入口を見上げてしまったが、雨模様にもかかわらず、市民が続々と入っていく。人気の施設なのだろう。広大な庭園には、さまざまな花が咲き乱れており、ポットや動物などの形に整えられた植木がユニークで、ベトナム人家族がしきりに写真を撮っていた。
日本にもさまざまなガーデンがあるが、このダラット市ガーデンはとにかくユーモラス。おもしろいのはゴミ箱。日本では、植えている木々のじゃまをしないように地味な色にしているガーデンが多いが、こちらでは、派手にペイントされた動物ゴミ箱があちこちに。
ペンギンやクマやネズミなど愛嬌のある顔で大きな口をあけている。気が付けばついついカメラを向けてしまう。
そして、展示方法も凝っている。馬車の座席に飾られた花々に、ずいぶんとメルヘンな展示だなあ、と近づけば、なんと張りぼてではなく、生きたポニーがつながれていた。つながれっぱなしで、ちょっとかわいそうな気もするが、時々、交替しているのだろうか。
そして、日本の盆栽コーナーを訪れれば、これは盆栽ではないだろう!と突っ込みたくなるほどの人間の背の高さをゆうゆうと超えた巨大な盆栽があったりして、ベトナム人のおおらかな感性に刺激を受けるだろう。
そのほか、インディアンの家のような小さな木製の小屋があったり、巨大なワインボトルが突然、立っていたりと、自由で気ままなベトナムならではのガーデンに、思わず長居をしてしまった。
子供向けかと思っていたが、大人でも十分楽しめる。園内はとてもきれいで池もあるので、もし訪ねるならゆっくり時間をとってほしい。
【ダラット市ガーデン】
■所在地/2 Tran Nhan Tong E of Town Centre, Da Lat
■営業時間/7:00-18:00
■休業日/無休
■日本語/不可
■入場料/2万ドン
次回はベトナム刺繍の魅力が詰まったダラットの「刺繍センター」を訪ねてみましょう。
取材・文・写真/白石あづさ
旅ライター。地域紙の記者を経て、約3年間の世界旅行へ。帰国後フリーに。著書に旅先で遭遇した変なおじさんたちを取り上げた『世界のへんなおじさん』(小学館)。最近は世界中で食べた珍しい動物の肉を取り上げた『