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旅行

歌手プレスリーが生まれた場所『サンスタジオ』をメンフィスに訪ねる【アメリカ南部を旅する 第4回】

エルヴィス・プレスリーが自分の歌を母親にプレゼントするために、初めてレコーディングした『サンスタジオ』。

エルヴィス・プレスリーが自分の歌を母親にプレゼントするために、初めてレコーディングした『サンスタジオ』。

文・写真/鳥居美砂

前回はエルヴィス・プレスリーの邸宅をはじめ、彼の偉業を再認識できる『グレースランド』を紹介した。その中で、エルヴィスがキャリアをスタートさせたレコーディング・スタジオについて少し触れたが、今回はその伝説のスタジオ『サンスタジオ』から話をスタートしよう。

『サンスタジオ』は資金のないミュージシャンが気軽にレコードディングできる場所として、ユニオン通りに開設された。エルヴィスも18歳のとき4ドルを払って、自分の歌を録音したという。それを偶然、スタジオのオーナーが耳にする。そしてデビュー、才能を一気に開花させていく。

エルヴィスのほかにも、ジェリー・リー・ルイス、ジョニー・キャッシュ、ロイ・オービソンなどのミュージシャンが、このスタジオからデビューを果たした。さらに、U2、リンゴ・スター、ボニー・レイットといったビッグ・ネームもこのスタジオで録音したことがある。音質がいい、というような理由ではないだろう。やはり、“ロックンロールが生まれた場所”に対して、尊敬やロマンを抱いているからだろうか。

現在はメンフィス屈指の観光スポットになっており、多くの観光客が訪れる。スタジオ内部は、ガイドとともに1時間ほどのツアーで見学できる。若かりしエルヴィスやブルースマンたちが使用したマイクやギターなど、当時の音楽機材や楽器、写真や資料が展示され、このスタジオで録音された貴重な音源も聞かせてくれる。

スタジオ内部にはB.B.キング、ハウリン・ウルフといったブルースの大御所たちの展示もあり、ガイド付きのツアーで見学できる。ショップは、ツアー開始を待つ観光客でいっぱいだ。

スタジオ内部にはB.B.キング、ハウリン・ウルフといったブルースの大御所たちの展示もあり、ガイド付きのツアーで見学できる。ショップは、ツアー開始を待つ観光客でいっぱいだ。

ロックンロールが生まれたスタジオならではの豊富な資料を展示。ツアーでは見るだけでなく、貴重な音源も披露してくれる。

ロックンロールが生まれたスタジオならではの豊富な資料を展示。ツアーでは見るだけでなく、貴重な音源も披露してくれる。

サンスタジオ
www.sunstudio.com

メンフィスには、世界中のロック好きが訪れる場所がほかにもある。それが、ギターのトップメーカー『ギブソン』だ。現在、ギターの多くはナッシュビルで製作されているが、メンフィスの中心部にもショールームを兼ねた工房があり、その製造工程を見学できるようになっている。

45分程度の見学ツアーだと聞いていたので、早速行ってみた。ところが、午前中にもかかわらず、本日のツアーは予約が一杯で受付終了とのこと。ギターを愛する世界中のファンを相手に、読みが甘かった……。行かれる方は、早めに予約を。

『ギブソン』では見学ツアーを諦めて、ギフトショップを見るだけになった。名器がずらりと並ぶ様は壮観。

『ギブソン』では見学ツアーを諦めて、ギフトショップを見るだけになった。名器がずらりと並ぶ様は壮観。

『ギブソン・メンフィス・ギター・ファクトリー』
www.gibson.com
気を取り直して、次はメンフィス名物の食べ物を紹介したい。
メンフィスでは毎年、国際バーベキュー大会が開催されるほど、炭火焼きが盛んな土地柄だ。とくに、スモーク(燻製)されたボークリブ(スペアリブ)の味は格別で、それを売りにする数々のスモークハウスがある。

家庭でスペアリブを作るときは大抵オーブンで焼き、屋外だと炭火を使うこともあるだろう。スパイスに凝ったり、甘みにりんごジュースを入れたり、マーマーレードを使ったりと工夫はある。しかし、メンフィスで「ポークリブ」といえば、スモーク工程が入るようだ。スモークすることで香りも、風味も一段とよくなる。

1948年創業という『ランデブー』の「ポークリブ」は、黒々として見た目は少々悪いかもしれないが、その味は折り紙付き。脂がほどよく落ちてさっぱりして、スパイスの味がうまく効いている。今まで食べたリブでは最高!の味だった。
予約を取らないので待つことになるが、その価値は大いにある。

『ランデブー』の「ボークリブ」。コールスローと豆の煮込みが付く。写真はスモールサイズ。最初に骨を1本だけ外した状態で出され、あとは手で骨をはずしながら、むしゃぶりつくように食べる。

『ランデブー』の「ボークリブ」。コールスローと豆の煮込みが付く。写真はスモールサイズ。最初に骨を1本だけ外した状態で出され、あとは手で骨をはずしながら、むしゃぶりつくように食べる。

『ランデブー』
http://www.hogsfly.com

日が暮れるのを待っていたように、ビール・ストリートのネオンが輝き始める。メンフィスの夜の主役は、この通り沿いに立ち並ぶライブハウスだ。
ニューオリンズで一番賑わう通りがバーボンストリートだったから、こちらは“beer(ビール)”と思ってしまうが、綴りはBeale。人の名前だそうだ。

この通りには、惜しくも昨年21015年に亡くなったB.B.キングが開いた『B.B.キング・ブルース・クラブ』をはじめ、30軒以上のライブハウスがあり、ブルースやロック、ジャズなどの生演奏を楽しめる。

週末のビール・ストリート。パトカーがスタンバイしているが、決して危ない場所ではない。

週末のビール・ストリート。パトカーがスタンバイしているが、決して危ない場所ではない。

ビール・ストリートを代表するライブハウス『B.B.キング・ブルース・クラブ』。ネオンがひときわ、明るく輝く。

ビール・ストリートを代表するライブハウス『B.B.キング・ブルース・クラブ』。ネオンがひときわ、明るく輝く。

B.B.キングは生前、自分のクラブのステージに立つこともあったという。ちょうど独立記念日前の土曜日だ、生きていたらその姿を見ることできたかもしれない。しかし、それは叶わない夢……。
店の前で中から漏れてくる音を聞いてみると、B.B.キング抜きのブルース・バンドがプリンスの名曲「パーブル・レイン」を演奏しているらしい。それはないよなぁ。私はプリンスのファンだけど、この選曲はあり得ない。

ニューオリンズもそうだったが、ここメンフィスでもライブハウスの扉が開いていて、ステージの演奏が漏れ聞こえるようになっている。それが気に入ったら、店に入ればいいのだ。
ビール・ストリートを行ったり来たりして、ようやく良さそうな店を見つけた。それが『ラム・ブギー・カフェ』、チャージの5ドルを払って中に入った。この店はステージが2つあって、ジャンルの違った音楽を楽しめる。

リズム&ブルース色の強いステージでは、ギターのちょっと土臭い音色とパワフルな黒人女性ボーカルが私好みだった。一方のステージはハードロック寄りで、エッジの聞いた演奏。リードギターはなかなかのテクニックの持ち主で、ボーカルも聴かせてくれる。

決して有名ではないが、実力のあるミュージシャンたちだ。ビール片手に、ふたつのステージを往来しながら、音にも酔いしれた。

『ラム・ブギー・カフェ』の熱いステージ。ボーカルがソウルフルで、またカ ッコいい!

『ラム・ブギー・カフェ』の熱いステージ。ボーカルがソウルフルで、またカッコいい!

次回は、メンフィスでは避けて通れない黒人解放運動について伝え、牧師となったかつてのソウル・ボーカリスト、アル・グリーンの教会を訪ねて、彼のゴスペルを聞いた話も紹介します。

文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。『サウンド・レコパル』などで音楽記事も担当。

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