道端にふと現れるお地蔵さま。全国には、地域の人々に愛されているさまざまなお地蔵さまが点在しています。小さな祠に祀られていることもあれば、公園の片隅で風雨にさらされていることもあり、縄で縛られていたり、油にまみれていたりと多種多様な姿を見せてくれるお地蔵さま。
そんなお地蔵さまに魅了された写真家・野口さとこさんの連載『魅惑のお地蔵さま巡り』。前回の「近畿の夏の風物詩「地蔵盆」も見られる|魅惑のお地蔵さま巡り【京都・奈良編】」に続き、今回は東京、神奈川、福井、兵庫のお地蔵さまをご紹介します。
掲載されているデータ等は変更になっている場合がありますので、ご確認のうえお出かけください。
■首にかけられた大量の唐辛子|東京都・小石川
文京区小石川の傳通院近くのお寺にいらっしゃるのは、大量のとうがらしを首に巻いた見るからにインパクトのある「とうがらし地蔵」。またの名を「せきどめ子育地蔵尊」と言います。
咳などの喉にまつわる病に苦しむ人々が祈願すると治り、お礼に唐辛子を供えるようになったそうで、咳の願掛けに霊験あらたかなお地蔵さまです。
なぜ唐辛子を!? 東京・小石川「とうがらし地蔵」の御利益とは【魅惑のお地蔵さま巡り2】
■身体中を縛り付けるたくさんの縄|東京都・茗荷谷
東京都文京区の茗荷谷にある林泉寺の境内にいらっしゃるお地蔵さまは、縄でぐるぐる巻きに縛られています。人々が願掛けのために、縄で縛るのだそうです。
満願成就すると縄を解くしきたりがあるので、きつく結ぶとお地蔵さまも早く解いて欲しくて、早く願いを叶えてあげようと思うのかもしれません。
そんなに巻いてどうするの?東京・茗荷谷の「しばられ地蔵尊」【魅惑のお地蔵さま巡り3】
■塩を刷り込まれて体はボロボロに|神奈川県・川崎市
神奈川県川崎市にある医王寺の境内にいらっしゃる「塩どけ地蔵」。骨と皮と筋になったような姿が痛々しいお地蔵さまです。
昔、できものの病気が流行り、子ども達がかゆさと痛さに泣いていました。村人たちはお地蔵さまにお清めの塩を塗りつけて、子ども達の身代わりになって下さるようお願いしたところ、できものが治ったことから、子どもの快癒を願う村人達に塩を繰り返し塗りつけられて、このような姿になってしまったのだそうです。
身を削って身代わりに!川崎「塩どけ地蔵」の有難い話【魅惑のお地蔵さま巡り4】
■個性豊かな極彩色のお地蔵さま達|福井県・小浜市
近畿地方を中心に、毎年8月中旬~下旬にかけて子ども達の幸せと無病息災を願って行われる、子どもが主役の地蔵盆。福井県小浜市の西津地区は地蔵盆が盛んな地域で、数日前にはお地蔵さまを海に連れて行って洗い清め、絵具で彩色し、涎掛けを新調して、この日のために組み立てた地蔵堂などに祭壇を設えてお祀りします。
西津地区のお地蔵さま達は、とっても個性的なお顔の方が多く、極彩色に飾られていたり、パステルカラーやベンガラで彩色されていたりと、さまざま。かわいらしいお地蔵さまに会いに、ぜひ町を巡ってみてください。
小浜西津の地蔵盆|心ときめく極彩色のお地蔵さま【魅惑のお地蔵さま巡り 第6回】
■掘り出してもらうべく夢枕に立ったお地蔵さま|兵庫県・出石
各地の地蔵盆を巡るのが楽しみという野口さとこさんが兵庫県豊岡市出石で出会ったお地蔵さま。300年程前、仙石越前守政明が出石城主として国替えされた際に、蕎麦打ち職人として随伴してきて以来、営んでいるという蕎麦店『南枝』でお世話をしています。
なんでも、夢枕にお地蔵さまが立ち、「お城に眠っているので、掘り起こしてほしい」とおっしゃったというから驚きです。無事に掘り起こされたお地蔵さまは、現在は町内の地蔵盆の際にお祀りされるそうです。
出石城跡から出てきたお地蔵さまの不思議な由来【魅惑のお地蔵さま巡り 第7回】
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顔や形はもちろん、その由来もさまざまですが、地域の人々に愛され敬われているお地蔵さまに、会いに行ってみませんか。