写真・文/野口さとこ

「地蔵盆(じぞうぼん)」というお祭りをご存知だろうか。近畿地方を中心に、毎年8月中旬~下旬にかけて子ども達の幸せと無病息災を願って行われる、子どもが主役の夏の楽しいお祭りのことである。

とくに福井県小浜市の西津地区は、この地蔵盆が盛んな地域。地蔵盆の数日前には、祠の中からお地蔵さまを海に連れて行って洗い清め、絵具で彩色し、涎掛けを新調して、この日のために組み立てた地蔵堂や集会所、民家の一部屋など、地蔵盆の会場となる場所に祭壇を設えてお祀りする。

会場の外側には、提灯とともに「南無地蔵大菩薩」と書かれたカラフルな幟旗が、七夕のように笹竹に付けられる。

そして、子ども達が太鼓や鐘を鳴らし、「まいってんのー、まいってんのー、まいらにゃ、とおさんぞー」(お参りしてね、お参りしないと通しませんよ)「なーむじーぞーだーいーぼさーつ(南無地蔵大菩薩)」とお地蔵さまのご真言を独特のリズムで唱えて、道行く人にお賽銭を入れてもらう。

西津地区のお地蔵さま達は、ほとんどが“化粧地蔵”で、とっても個性的なお顔の方が多い。以下に、私が地蔵盆の際に撮影させていただいた、心ときめくお地蔵さま達をご紹介しよう。

小さな子どもがお顔を書いたと思われる、稚拙さがたまらなく可愛いお地蔵さま。もなかの皮のようなものに彩色を施した飾りをつけている。

パステルカラーをあしらったアニメチックな世界。 お顔だけのお地蔵さまのインパクトがすごい。

ベンガラで色彩されたお地蔵さま。簡素化されたお身体は、まるでキュビズム絵画を見るよう。

お地蔵さまのお姿やお祀りの仕方は、日本海側に行けば行くほど、なぜかエキゾチックでビビッドな色彩を帯び、自由闊達な表情になるのが興味深い。

子ども達や、お母さん達が施したであろう手作り感いっぱいの可愛い飾り付けにも心がときめいてしまう。

西津は、狭い地域に集中してお地蔵さまがおられるため、歩いてお地蔵さまを巡るにはちょうど良い。次の角を曲がれば、祠がすぐ目の前に、といった具合に。

そして今年も、地蔵盆の日が近づいてきた。もし機会があれば、この期間を狙って訪ねてみてほしい。懐かしい日本の夏を感じながら、極彩色のお地蔵さまにお会いすれば、感動もひとしおだろう。

写真・文/野口さとこ
写真家。北海道小樽市生まれ、京都在住。1998年フジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、写真家活動を開始。出版・広告撮影などに携わる。2011年 写真集『地蔵が見た夢』(Zen Foto Gallery)の出版を機に、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどのアートフェアで作品が展示される。2014年より、移動写真教室“キラク写真講座”を主宰。可愛くてあたたかい、そんなお地蔵さまの魅力に取り憑かれ、お地蔵さま撮影のため全国津々浦々を旅している。http://www.satokonoguchi.com/

 

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