写真・文/野口さとこ
東京都文京区の茗荷谷にある林泉寺の境内にいらっしゃるお地蔵さまは、縄でぐるぐる巻きに縛られている。見た目通り“しばられ地蔵”とおっしゃる。
江戸っ子は名前を付けるのが好きだったのだろうか、ご利益だとか特徴が一目でわかるような、名前のあるお地蔵さまが多い印象がある。
さて、このお地蔵さまを人々は願掛けのため、縄で縛るのだそうだ。願いを込めながら縄を結べば、自分の思いも強くなって成就への近道になりそうだし、満願成就すると縄を解くしきたりがあるので、きつく結ぶとお地蔵さまも早く解いて欲しくて、早く願いを叶えてあげようと思うのかもしれない。
この日も、お地蔵さまは足元から沢山の縄に巻かれていた。
「縛られてさぞかし苦痛なのでは?」と思いながら、お顔を窺ったが、お地蔵さまは耐え忍ぶでもなく、なんとも穏やかな少女のようなお顔をされていた。
写真・文/野口さとこ
写真家。北海道小樽市生まれ、京都在住。1998年フジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、写真家活動を開始。出版・広告撮影などに携わる。2011年 写真集『地蔵が見た夢』(Zen Foto Gallery)の出版を機に、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどのアートフェアで作品が展示される。2014年より、移動写真教室“キラク写真講座”を主宰。可愛くてあたたかい、そんなお地蔵さまの魅力に取り憑かれ、お地蔵さま撮影のため全国津々浦々を旅している。http://www.satokonoguchi.com/