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写真・文/野口さとこ

数年前、奈良を旅行中に突然の夕立にあい、慌てて橋を渡っていた時、ふと川の方から赤いものがちらりと目に入ってきたので、そちらを向いてみると、そこには舟に乗ったお地蔵さまの御一行がいらっしゃった。

赤いものは、お地蔵さまの涎掛けだったのだ。

石のお身体と赤い涎掛けが雨に濡れて、鮮やかに存在を強調している。

まるで映画のワンシーンのようなその光景に心を奪われ、遠くから撮影させていただいた。

率川地蔵尊、尾花谷地蔵尊、舟地蔵と呼ばれ親しまれている。

最近、また奈良に行く機会があり、再訪した。

涎掛けは、色あせてサーモンピンクになっていたが、皆さまご健在のようだった。

橋の上からお参りできるように、手すりに賽銭箱が備え付けてある。お地蔵さまを見下ろしてお参りするということはあまりないので、不思議な感じがする。

このお地蔵さま御一行は、猿沢池の南西に位置する率川(いさがわ)にかかる橋から、拝見することができる。幕末の頃、周辺の河川工事の際に見つかったので、ここに集めてお祀りするようになったのだそうだ。

河川工事や土地の開発の際に川や土の中から出てきたのでお祀りした、というお地蔵さまの話はよく聞くのだが、川の中に舟を作ってそれに乗っているお地蔵さまを、ここ以外に私は知らない。

水嵩はほとんどないので、下に降りて近くでお参りすることもできる。

お地蔵さまご一行が、舟旅をしながら各地の人々の様子を見守っている姿が目に浮かんだ。

どなたが考えたかわからないが、粋で素敵なアイデアだな、と思う。

写真・文/野口さとこ
写真家。北海道小樽市生まれ、京都在住。1998年フジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、写真家活動を開始。出版・広告撮影などに携わる。2011年 写真集『地蔵が見た夢』(Zen Foto Gallery)の出版を機に、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどのアートフェアで作品が展示される。2014年より、移動写真教室“キラク写真講座”を主宰。可愛くてあたたかい、そんなお地蔵さまの魅力に取り憑かれ、お地蔵さま撮影のため全国津々浦々を旅している。http://www.satokonoguchi.com/

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