文・写真/東リカ(海外書き人クラブ/ポルトガル在住ライター)

「ポルトガルの宝石」と呼ばれるポートワインは、酒精強化ワインには珍しい赤ワインが大半で、ルビーのような美しい赤色をしていることで有名だ。

ところが、実はポートワインには「琥珀色」をしたものもあり、近年世界で注目を集めている。この今の季節にぴったりな、味わい深い長期熟成ワインについて紹介する。

琥珀色のポートワインとは

琥珀色をしたポートワイン。

「ポートワイン」は、ポルトガルの「ポルト」付近で生産される酒精強化ワイン。酒精強化ワインとは、醸造過程で酒精(アルコール)を添加した保存が効くワインのことだ。濃厚なコクと甘さが特徴で18世紀頃からイギリス紳士を中心にデザートワイン、また欧州の冬のホリデーに楽しむお酒として愛好されてきた。

日本ではポートワインと聞いて「赤玉ポートワイン(現スイートワイン)」を思い浮かべる人もいるだろう。この「赤玉」の開発者が「ポートワインのような美しい赤色にこだわった」と言うように、ポートワインといえば、最高級ぶどうで作られる「ヴィンテージ・ポートワイン」の美しいルビー色が有名である。

半世紀寝かされたベリー・オールド・トウニー。

ところが、近年、このヴィンテージ・ポートワインに負けないほど人気を得ている「赤くない」ポートワインがある。それが、琥珀色をした長期熟成ポートワイン「オールド・トウニー(old tawny)」である。ちなみに、トウニー(tawny)とは英語で黄褐色という意味である。

オールド・トウニーの製造方法や魅力を学びにポルトガルの老舗ポートワインメーカー「テイラーズ」を訪ねた。

「天使とシェア」する木樽熟成ワイン

1692年創設のテイラーズは、300年以上の歴史をもつ名門老舗ワイナリー。ポートワインの製造方法や歴史を学んだり、試飲ができるツアーも提供している。

今回は、テイラーズの広報担当のアナさんが筆者を案内してくれた。

テイラーズの熟成庫を案内してくれたアナさん。

さっそく木樽がずらりと並ぶ熟成倉庫を訪れたのだが、中に一歩足を踏み入れた瞬間、甘くて芳醇な香りに包まれた。この香りの正体は、倉庫内に充満する「天使の取り分」と呼ばれる蒸発したワインである。

ワインを木樽で熟成させると、木が呼吸するため、中に入っているワインはゆっくりと酸素に触れながら熟していく。通常のワインは、長期熟成型の高級ワインであっても、木樽で寝かせる期間はおおよそ2年間でその後は空気に触れない瓶熟成へと移るのだが、酒精強化ワインであるオールド・タウニーは長期の穏やかな酸化過程に耐えられることもあり、最低でも10年を木樽の中で過ごす。この木樽での熟成により、複雑で奥行きのある風味とまろやかな舌触りを得てゆく。また、「天使がこっそり飲んだ」と言われるように、熟成過程でワインのアルコールと水分が蒸発することで、香りと味わいは濃縮し、より強く豊かな味わいになっていく。さらに色彩も若いぶどうの赤紫色から徐々に琥珀色へと移ろうのだ。

通常のワインは、新品のオーク樽を用いてその香りをワインへ移すことも多いのだが、ポートワインは木の香りを移さないために、敢えて使い込まれたワイン樽で熟成される。樽は一部が破損したら、「タノエイロ」と呼ばれる樽職人がそのピースだけを交換して使い続けるため、何百年ものの樽もある。

トウニーワインを移し替える作業。

糖度の高いポートは樽の内側に澱が結晶を作るため、年に一度、ワインを別の樽に移し替え、樽を洗浄する作業が出荷時まで毎年行われる。何十年もの熟成には、多くの人々が丁寧に寄り添っているのだ。

今年、半世紀ものが日本初上陸

80年以上熟成されたベリー・ベリー・オールド・トウニー。

オールド・トウニーを飲んでみたくなっただろうか?

市場には、オールド・トウニーの10年、20年、30年、40年が流通している。そして、2021年、50年熟成した「ベリー・オールド・トウニー」、また80年以上寝かせた「ベリー・ベリー・オールド・トウニー」という新たなカテゴリーのトウニーポートの販売が解禁された。この半世紀以上熟成されたトウニーポートには世界中のワインファンが注目した。日本でも、2023年5月に日本ポルトガル商工会議所がお披露目する形で50年熟成ポートが初上陸した。

筆者は、テイラーズで10年、30年、50年、80年のオールド・トウニーを飲み比べてみた。年がいくにつれて繊細な味わいになるかと思いきや、水分とアルコール分が蒸発することで糖度と酸味が上がっていくため、古いものほどまろやかな口当たりながら、より生き生きと鮮やかに個性を主張してくる。

熟成するにつれ、ベリー系のフルーティーさは薄れ、カラメル、オレンジ、そして葉巻などを彷彿させる味わいになっている。

左から30年、50年、80年のオールド・トウニー。

アナさんは、「古いほど美味しいと考えるのではなく、自分好みの味を選べばいい」と言う。

そんな彼女のパートナーとなるのは10年もののオールド・トウニー。

「仕事も夕飯も終えた冬の夜、お気に入りの椅子に座って、殻付きの胡桃を割ってつまみながら、これをちびちび楽しむのが至上の幸せ」と笑う。

トウニーはいずれも飲み頃で出荷されるため、すぐに飲み始めることができる。澱は取り除かれているので、デキャンタージュ(ワインをデキャンタと呼ばれるガラス容器に移し替える作業)も不要だ。また通常のワインと違い、空気に触れることに慣れているため、開封後も冷蔵庫で保管すれば数か月かけて楽しめる。コルクも保存に適した栓になっている。

長い時間をかけて琥珀色に熟成したオトナのお酒。この冬のお供に、大切な人への贈り物にもお勧めだ。

Taylor’s Port
https://www.taylor.pt/
住所:Rua do Choupelo, nº 250, 4400-088 Vila Nova de Gaia, Portugal

文・写真/東リカ
ブラジル、アメリカを経てポルトガル在住のライター。著書に「好きなことして、いい顔で生きていく ~風変わりな街ポートランドで、自分らしさを貫く15の物語~ 」。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 


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