最近、身の回りで結婚が決まった方がいても、結納をされたご家庭は少数派ではないでしょうか? 今は結婚を「家と家の結びつき」と捉えるよりも、「子ども同士の繋がり」と考える親御さんが増えてきている印象です。
親はあくまで「子どもたちのサポート役」に徹する風潮ですが、こと「結納」に関しては親が主導権を握る数少ないイベントになります。
結納に関して「婚約のけじめとしてきちんと儀式を執り行ないたい」と考えるご家庭もあれば、「堅苦しい儀式は不要」と考えるご家庭も。結納に対する価値観は人それぞれです。
中には残念ながら、どちらかが強引に意見を押し付けたことで、親同士が結納をきっかけに不仲になってしまったケースも存在します。「結納」は両家の絆を深める儀式ではありますが、お互いの事情を良く理解し、相談することが大切です。
本記事では、結納の流れや準備するものなど、最近の結納事情をご紹介します。
目次
結納とは?
結納は必要か?
結納の準備
今どきの結納の流れ
最後に
結納とは?
「結納」とは「婚約の証」として、両家間で品物やお金の受け渡しを行なう伝統的な儀式のことです。
現在では結納をされる家庭は少数派です。しかし、以前は「結納は正式な婚約のステップ」として、ほとんどのご家庭で取り入れられている儀式でした。古くからの伝統である結納の品物には、それぞれ「長寿」や「子孫繁栄」の願いが込められています。いつの時代も、親が子どもに「幸せな結婚をして欲しい」と想う気持ちは変わらないようです。
以前の結納は、「仲人」という両家を仲介する人物が結納を仕切るのが定番でした。しかし、現在では両家の親と結婚する二人で行なうスタイルが主流です。
結納は大きく分けると二種類のタイプが存在します。
一つ目は「正式結納」というもの。仲人が両家を往来して結納品をおさめ、受書を渡すスタイルです。仲人が儀式を取り持つので、両家は直接やり取りしません。
二つ目は「略式結納」といい、ホテルや料亭などに両家が集い、結納品や受書を直接やりとりするものです。「略式結納」には「仲人あり」と「仲人なし」の場合があります。結納品もすべて揃える必要がないので、正式結納に比べると手軽でしょう。
結納の歴史
結納の起源は、諸説あります。一説には、約1600年前の仁徳天皇(にんとくてんのう)の時代、皇太子が結婚する際に「納采(のうさい)」の儀式をしたことが結納の起源だとの見方もあります。「納采」とは男性の親が女性の親に挨拶と贈り物をする儀式のことです。室町時代に徐々に武家でも行なわれるようになり、江戸時代には裕福な商家なども取り入れるようになりました。
現在でも「納采の儀」は皇室で婚約の際に行なわれる儀式なので、ニュースなどで一度は耳にしたことがある方も多いでしょう。
結納は必要か?
結納は、婚約するにあたって必須の儀式ではありません。しかし、「家の格」や「家同士の繋がり」にこだわるご家庭であれば、「結納を行なうのは当たり前」と考える方もいらっしゃいます。いずれにしても、相手の家の考えを尊重することが大切です。
ここでは、現在の婚約時の主流行事である「顔合わせ食事会」と「今どきの結納スタイル」についてご紹介します。
顔合わせ食事
最近では結納をしない代わりに、両家の親睦を深めることに重きを置く「顔合わせ食事会」を選ばれる方が増えています。
「顔合わせ食事会」には、結納のような堅苦しい儀式はありません。時間をかけてゆっくり食事を楽しみながら、両家の交流を行なうことが主な目的です。
「顔合わせ食事会」の会場はホテルや料亭などが多く、最後に婚約指輪や腕時計など、婚約記念のプレゼントのお披露目が行なわれることもあります。費用も抑えられて、特に準備が必要なく身軽なところが人気の理由といえるでしょう。
今どきの結納スタイル
近年行なわれている、ほとんどの結納は「略式結納」です。その背景としては、「恋愛結婚の増加に伴い仲人が不在」や「住宅事情の変化により結納品を置くスペースがない」のようなライフスタイルの変化が考えられます。
また、最近では形式ばった結納ではなく
・結納金のみ
・腕時計やスーツ、婚約指輪などの婚約記念品のみ
のように結納のスタイルも多様化しています。伝統を守りつつ、両家の親と子どもたち全員が納得できる結納を目指しましょう。
結納の準備
結納は地域によって準備する品物が変わるので、両家の地域が異なる場合、擦り合わせが必要です。基本的には男性側に合わせますが、結納品を自宅に持ち帰るのは女性側なので、女性側に合わせることもあります。両家でもめないためにも、両家の地域の習慣を理解し合い、相談することが大切です。
結納のスタイルは、大きく分けると「関東式」と「関西式」の二つに分かれます。「関東式」では女性側から男性側へお返しを用意しますが、「関西式」では返さないケースがほとんどなど、その様式も様々です。
関東式と関西式を比較すると、以下の通りになります。
【関東式】
結納品は5~9品目で、豪華な結納飾りはありません。平均予算は1~5万円程で、両家で贈り合うのが一般的です。
【関西式】
結納品は9~11品目で、豪華な結納飾りがあり華やかな印象です。平均予算は4~20万円と幅広い価格帯で、男性側のみ贈るのが一般的。
ここでは、「関西式」の結納で男女別に準備するものをご紹介します。
男性側の準備
1:長熨斗(ながのし)
「不老長寿」の願いが込められたアワビの干したもの。
2:末廣(すえひろ)
「幸せが広がる」ことを表した白無地の扇子。
3:小袖料(こそでりょう)
結納金のこと。「帯地料」とも言う。
4:家内喜多留(やなぎだる)
柳の酒樽。「家の中に多くの喜びが溜まる」との意味がある。
5:勝男節(かつおぶし)
かつお節。勝男武士とも書き、男性の強さを表すもの。
6:結美和(ゆびわ)
婚約指輪。
7:高砂人形(たかさごにんぎょう)
長生きを願った人形
8:寿留女(するめ)
するめは長期保存できることから「末長いご縁が続きますように」との意味がある。
9:子生婦(こんぶ)
「よろこぶ」の意味を含み「子孫繁栄」の願いが込められているこんぶ。
基本は1~5の飾り付きを用意しますが、6と7を加えて7品、8と9を加えて9品とすることもあります。
女性側の準備
関西式では結納返しは、準備しないのが一般的です。その代わりに、嫁入り時に相手家族への土産代として「結納金の一割」程度の金額を持たせたり、新生活に必要な家具や家電を女性側が負担することがあります。「結納のお返し」はお金に関することなので、両家間でしこりが残らないように相談してから決めることが大切です。
また、お金ではなく品物を「婚約記念品」として女性から男性へ贈ることも。スーツや腕時計が定番ですが、相手の好みのものを贈ってあげるのも良いでしょう。
今どきの結納の流れ
今時の結納は「略式結納」がメインのため、仲人が不在のケースがほとんど。その場合、男性の父親が進行役を努めるのが一般的です。
男性側が先に入室し、続いて女性側が入室します。全員が揃ってから着席し、基本的には上座から順に子どもたちが座ります。しかし、より「家と家の結びつき」を重視する儀式の場合のみ、子どもたちは下座に座るのが一般的です。
儀式の最中は、口上以外の余計な会話は慎むのがルール。結納品を専用の台に設置し、両家が着席したら儀式を開始します。
1:両家の挨拶
2:進行役の挨拶(男性側の父親)
3:男性側の結納品を女性側へ渡す(男性側の母親)
4:女性本人が目録(もくろく)を確認
5:結納品を飾り、女性側の受書を男性本人の前に置く。女性側に結納品がある場合はそれを渡す(女性側の母親)
6:男性本人が、目録を確認(女性側からの結納品がある場合に限る)
7:女性側が受書を受領
8:締めくくりの口上(男性側の父親)
9:返礼の挨拶(女性側の父親)
儀式だけで終わることはなく、この後記念撮影や食事会が続きます。
最後に
「結納の成功の鍵」は両家のコミュニケーションといっても過言ではないでしょう。結納が両家の絆がより深めてくれる良い機会となることを願っています。
監修/トップウエディング https://top-wedding.jp/
構成・執筆/吉川沙織(京都メディアライン)
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