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旅行

オーストリアの「緑のワイン」をワイン居酒屋「ホイリゲ」で満喫

文・写真/御影実(オーストリア在住ライター/海外書き人クラブ)

オーストリアは紀元前からの歴史を持つ、欧州でも有数の白ワインの産地です。ぶどうの生産に適した土壌と、ドナウの流れ、バラエティーに富んだその地形は、ローマ帝国時代からこの地域のワインの生産を支えています。

●ワインの種類と産地

アルプスの小国として知られるオーストリアですが、ワインは山岳地帯ではなく、丘陵地帯や平地で生産されます。ウィーン周辺の「ウィーンの森」やドナウ河が湾曲する世界遺産ヴァッハウ渓谷では白ワイン、ハンガリーとの国境に近い平野では赤ワイン、そして、緑の丘が広がるシュタイヤーマルク州ではロゼワインが主に生産されています。

その中でも特にオーストリアに特有なのは、グリューナー・ヴェルトリーナーと呼ばれる白ブドウの品種。爽やかでフルーティーな飲み口が特徴で、その色から「緑のワイン」とも呼ばれています。また、品種改良された赤ワイン「ツヴァイゲルト」もこの国独自の品種です。

また、「ゲミシュターザッツ」は、同じ土地でとれた複数の品種を混ぜて作られたワインで、土地に関係なく複数の品種をブレンドした「キュヴェ」よりも、土壌の特徴を味わえることができるワインとなっています。

オーストリアは、貴腐ワインやアイスワインの生産量も多く、国内のワインショップでは品質の良いものが比較的お手頃な価格で購入できます。

このように、他の国にはあまりない手法や品種があり、独自の発展を遂げたオーストリアワインは、世界中のワイン通の間でも親しまれています。

●ワイン居酒屋「ホイリゲ」の楽しみ方

そんなオーストリアワインを楽しむには、ワイン居酒屋「ホイリゲ」がお勧め。ホイリゲとは、「今年とれた新酒」という意味で、その年に収穫したブドウで作ったワインをぶどう畑のすぐそばで飲ませてくれる、ワイン農家直営の居酒屋です。

目の前の葡萄畑でとれたワインを飲みながら、軽食をつまむのが、オーストリア的スタイル。高級ワインをバーで気取って楽しむのとは異なり、自然に囲まれた田舎の風景と、フレッシュなワイン、素材の味を活かしたシンプルな料理を存分に楽しむことができます。

ワインも品質によって楽しみ方が異なります。瓶詰された質の良いワインを飲む場合にはワイングラスから飲みますが、できたてのワインを樽から飲む場合には、ホイリゲ特有のずんぐりしたグラスを使用します。また、クシュプリッツター(G’spritzter)とよばれる、ガス水と割って飲む白ワインも暑い日に人気。ワインの質やその日の気分に合わせて、様々な楽しみ方ができますね。

そして、ホイリゲ料理も一味違います。パテを塗ったパンや、ソーセージのスライスなどのシンプルなものも、とてもワインによく合いますし、ショーケースから豪華な肉料理を選んで、テーブルで取り分けて食べることもできます。

●秋の風物詩「シュトルム」を飲んでみよう

そんなホイリゲ通いが最も楽しくなるのが、オーストリアや欧州の一部の地域だけで期間限定で飲むことができる、珍しい飲み物が出回る秋です。

オーストリアで「シュトルム」と呼ばれるこの飲み物は、ぶどうの収穫から新酒ができあがる間の、いわばぶどうジュースとワインの中間の飲み物です。ぶどうジュースの甘みを残しつつ、ワインのアルコールも入っていて、甘酸っぱく味わい深い飲み物です。

発酵途中の飲み物ですので、色は濁っていて、発泡しています。アルコール度数は4~11%と、発酵具合によって異なるのも、「生きているワイン」ならではですね。

最近スーパーでもシュトルムをボトルで購入することができますが、まだ中身は呼吸し、発泡していますので、蓋には小さな穴が開けられています。傾けるとこぼれてしまいますので、スーツケースなどに入れて持ち帰るには適しません。

また、発酵途中ということで、飲みすぎるとお腹を壊すことがあります。ドイツで「フェーダーヴァイサー」と呼ばれているこの飲み物が、オーストリアで「シュトルム(嵐)」と呼ばれている理由の一つだとも言われています。

●秋のワイン祭り

このシュトルムを楽しむお祭りが、ウィーン近辺の多くのワイン生産地で開かれます。

半地下のワインセラーが集まった、ワイナリー通り「ケラーガッセ」は、オーストリア独特のワインの村の風景ですが、この「ケラーガッセ」沿いのホイリゲが、それぞれの畑でとれたシュトルムやワインをふるまいます。時には、ハプスブルク時代から使われているワインセラーに入らせてもらえる場合もありますよ。

* * *

オーストリア独特のワイン文化と、秋限定の楽しみ方、いかがでしょうか?

独自の歴史とアットホームな居心地の良さが楽しめるオーストリアのホイリゲとワイン。

ワイン好きな方だけでなく、田園風景の散策を楽しみたい方、秋の風物詩を楽しんでみたい方は、ぜひ一度この時期にオーストリアに足を運んでみてください。

文・写真/御影実
オーストリア・ウィーン在住フォトライター。世界45カ国を旅し、『るるぶ』『ララチッタ』(JTB出版社)、阪急交通社など、数々の旅行メディアにオーストリアの情報を提供、寄稿。海外書き人クラブ(http://www.kaigaikakibito.com/)所属。

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