文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)
1949年、売れない女優兼モデルだった当時22歳のマリリン・モンローは、カリフォルニア州パーム・スプリングスにあるテニスクラブで芸能エージェントのジョニー・ハイドによって「発見」された。1950年代に大スターになった後も、モンローは2人目の夫となった伝説の野球選手ジョー・ディマジオとともに、パーム・スプリングスを度々訪れた。そして没後50年の2012年、高さ約8メートルの巨大なモンローの彫像がこの地に建てられ、新たな観光名所になっている。
砂漠の中のミニ・ハリウッド
パーム・スプリングスはロサンゼルスから東へ向かい、高速道路をドライブすると片道2時間ほどの距離にある。Palm(椰子の木)、Springs(温泉)の地名から想像できるように、温暖な気候で知られる避寒地リゾートである。付近には有名なゴルフ場も多い。もっとも砂漠の中に位置しているので、夏は快適に過ごすにはいささか暑すぎる。別荘所有者や観光客で賑わうのは冬場の数か月間に限られる。
現在パーム・スプリングスと呼ばれているこの土地には、2,000年以上も前から北米先住民のカフイラ族が住んでいた。彼らの言語で「沸騰する水」と呼ばれていたことからも、よほど潤沢な温泉に恵まれた土地であったことが想像できる。
1930年代頃から、パーム・スプリングスは多くの映画スターが訪れたり、別荘を所有することで知られるようになった。撮影スタジオがあるハリウッドからさほど離れておらず、何かあればすぐに戻ることができたからと言われているが、当時は活動範囲がハリウッド近辺に留まっていたゴシップ・ライターやカメラマンたちの目から逃れられたため、という理由もあったようだ。
ハリウッドと同じように、パーム・スプリングスのメインストリートには、この地に縁があるスターたちの記念プレートが歩道に埋め込められている。その数は400を越えるとされていて、日本でもよく知られる超大物に限っても、ダグラス・フェアバンクス、リリアン・ギッシュ、ジョン・ウェイン、フランク・シナトラなど、まさしく枚挙に暇がない。無論、マリリン・モンローの名前もそこには含まれる。
ロサンゼルスから日帰りも可能な等身大リゾート
「バグジー」ことベンジャミン・シーガルがフラミンゴ・ホテルをラスベガスに建設し、交流のあった多くのスターたちを招待したのは第2次大戦が終了したばかりの1946年のことである。
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それ以来、ハリウッドの社交界としての華やかな一面はラスベガスに移り、パーム・スプリングスの印象はやや地味になった。言い方を変えるとすれば、やや気軽に楽しむことができるリゾートになった。ホテルやレストランの値段も安くはないが、目が飛び出るほど高いというほどでもない。
メインストリートから数キロほどの距離にあるパーム・スプリングス・スタジアムは1949年に開場した。最大収容人数が約5千人の小さな野球場ではあるが、かつてMLBのカリフォルニア・エンゼルス(現ロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手が所属している)が春季キャンプをここで行っていた。近年は毎年1〜2月の間、全米最大級のスカウトリーグ『カリフォルニア・ウィンターリーグ』がこの球場で開催され、メジャーリーグを夢見る若手選手たちが全米各地のみならず日本からも集まってくる。約1か月のリーグ期間中は毎日試合を行っているので、足を運んでみるのも楽しいだろう。
「パーム・スプリングス公式観光ガイドセンター」(Palm Springs Visitor Information Center)
住所:2901 North Palm Canyon Drive
Palm Springs, CA 92262
電話:800-347-7746
公式ホームページ:https://visitpalmsprings.com/
文・角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。