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文・写真/倉田直子(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)

オランダの図書館で本を探す利用者

読書の秋到来で、久々に図書館に足を向ける方も多いのではないだろうか。 最近では日本にも特色のある図書館が増えているが、オランダの図書館も負けてはいない。ただ、旅行で訪れる外国人にとって、図書館は敷居が高く感じられる場所。なかなか普段垣間見ることのできない施設の一端を、今回は紹介していきたいと思う。

図書館サービスはタダじゃない

明るい図書館内部の様子(ハーレム中央図書館)

オランダの図書館の最大の特徴は、なんといってもサービスを有料化しているということだ。 無料で利用できる図書館が大半である日本人から見ると、これはなかなか衝撃的だ。けれど18歳までの未成年は無料で蔵書を借りることができる。自治体や割引の有無によって年会費は異なるが、アムステルダムの図書館では35ユーロ(約4327円)、アムステルダムから西へ20kmのハーレムでは46ユーロ(約5687円)が成人の基本料金となる。

DVDも豊富に取り揃えられている(ハーレム中央図書館)

各図書館にはDVDやCDのコーナーもあり、それらの貸し出しには、別途料金が科されることも(年会費に含まれる場合もある)。無料で会員になれる子供でも、DVDの貸し出しは有料ということもある厳しい世界だ。

「お金を払ってまで図書館を利用するのか?」という疑問を抱く方も多いのではないだろうか。オランダの統計局の調査(https://www.cbs.nl/nl-nl/nieuws/2019/47/daling-aantal-bibliotheekleden-en-uitleningen-zet-door#:~:text=In%202018%20waren%20ruim%203,aantal%20jeugdleden%20met%2042%20duizend)によると、2018年度には360万人が国内のいずれかの図書館の会員になっていたという(当時の全人口は約1706万人)。その10年前の2008年には397万人だったというので、確かに減少傾向にはある。

ただし、それとは別に「電子図書館会員」という、電子書籍の貸し出し専用の会員制度もある。ハーレムの図書館では、月額4.6ユーロで電子図書館メンバーになれる(アムステルダムでは通常の図書館カードのサービスに含まれている)。その「電子図書館会員」(通常サービスを含まない単体)は2018年現在で21万3千人に上ったという。2020年のコロナ禍によるロックダウン期間中は、一時的に無料で電子図書館が開放されたので、それを機会に会員になった人も増えたのではないだろうか。後年の集計が待たれる。

文化の発信場所

会員が使えるパソコンコーナー(ハーレム中央図書館)

他にも本の貸し出し施設としてだけではなく、オランダの図書館は情報や文化の基地局としての役割も果たしている。会員証を持っていると使用できるコンピュータなどは、その代表だろう。

図書館にある電子ピアノ(ハーレム中央図書館)

ピアノがある図書館も珍しくない。家庭の事情で楽器に触れられない子供や大人が、ここで音楽に触れられるよう配慮されている。アムステルダムの中央図書館には、アップライトピアノもある。

「大きな文字」の本のコーナー(ハーレム中央図書館)

更にオランダの図書館には、視覚障害のある人のための大きな文字で書かれた本のコーナーや、オーディオブックのコーナーも設けられている。

文字が大きく、非常に読みやすい

これが実際に貸し出されている「大きな文字」の本のページ。老眼の方にも読みやすいのではないだろうか。実際に、棚3つを占める人気コーナーだ。
ハンディキャップがある人や(音楽などの)文化に触れる機会が少ない人にも、読書や文化が楽しめるように配慮していることが伺える。

それ以外にも、まだオランダ語が流ちょうに話せない移民や外国人に対して、語学レッスンを低価格で実施している図書館もある。無料の交流サークルなどもあり、地域のコミュニティスペースとしての役割も果たしているのだ。

フォトジェニックな建物

アムステルダム中央図書館の児童書コーナー
子供たちが楽しそうに遊ぶ図書館

また、オランダの図書館はデザインにも定評がある。アムステルダム中央図書館は、特に児童書コーナーの愛らしさが目を引く。デザイン性に富んだ棚の配置と、備え付けの遊具を見る限り、まるで遊技場のようだ。一般的に図書館の児童書コーナーは一般書エリアと離れる配慮がされているので、少々はしゃいだ声をあげても咎める人はいない。子供が楽しく本にふれられるので、子育て中の家族は、自然と図書館に足が向くという算段だ。

Jaap BakemaとHans Boot によって設計されたロッテルダム中央図書館

また、ロッテルダム中央図書館は、建物を覆う黄色い配管が非常にフォトジェニックだ。

1983年の完成以降、市民に愛され続けている

第二次世界大戦の空襲で街が破壊されたロッテルダムは、街全体が新しくデザイン性に富んでいる。そんな中でも、図書館は十分に存在感をもって佇んでいるのが伺える。館内には「ライブラリーシアター」と呼ばれる劇場もあり、映画の上映やコンサート、美術の展覧会にも活用されているという。図書館が、市民の生活に欠かせない場となっているのだ。

くつろぎながら本が読めるソファ(ハーレム中央図書館)

「図書館が有料」と聞くと、日本人にとっては抵抗が大きいかもしれない。けれどオランダの図書館の様々なサービスを知るにつけ、有料なのも無理はないかとも思えてくる。いち利用者としても、これからも図書館には「情報・文化の発信拠点」として頑張っていって欲しい。

「アムステルダム中央図書館」
住所:Oosterdokskade 143, 1011 DL Amsterdam
電話:+31(0)20 – 523 0900
公式ホームページ(英語):https://www.oba.nl/oba/english/central-library.html

「ハーレム中央図書館」
住所:Gasthuisstraat 32, 2011XP Haarlem
電話:+31(0)23 – 511 5300
公式ホームページ:https://www.bibliotheekzuidkennemerland.nl/klantenservice/openingstijden-adressen/detail.263007.html/de-bibliotheek-haarlem-centrum/

「ロッテルダム中央図書館」
住所:Hoogstraat 110, 3011 PV Rotterdam
電話:+31(0)10 – 281 6100
公式ホームページ:https://www.bibliotheek.rotterdam.nl/locaties/centralebibliotheek

文・写真/倉田直子(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)
北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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