文・写真/横溝絢子(トルコ在住ライター)

世界で一番大きい地上絵

日本の約2倍の広さがあるトルコは、国土の大部分が高原となり、その中心部アナトリア高原にあるカッパドキア。カッパドキアをドライブしていると、アバノスとネヴシェヒルを結ぶ道に沿った山(カラ山)にある巨大な馬の地上絵が目に入る。

これは、オーストラリア人彫刻家、アンドリュー・ロジャーズ (Andrew Rogers)氏による芸術プロジェクト「リズム・オブ・ライフ」の一環であるカッパドキアにある作品「時と空間」合計13作のうちの一作である。

「時と空間」は、6つの地上絵と7つの石柱の構造物から成り、2.5kmにも及ぶ。馬の地上絵は、世界で最も大きい地上絵の作品となっている。

作品タイトル「ギフト」。カッパドキア に欠かせない馬がモチーフとなっている。

リズム・オブ・ライフ

「石を使って宇宙にささやく男」としても知られるロジャース氏の「リズム・オブ・ライフ」プロジェクトは、1991年から始まり、7大陸16カ国(ボリビア、チリ、中国、アイスランド、インド、イスラエル 、ケニア、ナミビア、ネパール、スロバキア、スリランカ、トルコ、米国、南極、スペイン、オーストラリア)において51作品が完成している。

作成期間は16年間に及び、合計7,500人以上の人々が作成関わる、史上前例のない規模の現代ランドアートプロジェクトとなっている。
ネパールのヒマラヤ山脈、中国のゴビ砂漠、アイスランドの火山山脈、イスラエルの砂漠などの地理的環境が厳しい場所に作品を残すことも人間の生命の痕跡を留めるというプロジェクトの意味となっている。

作品に使われている石は地元の人々によって組み立てられた。

時と空間

カッパドキアで2007年から2009年の間に制作された作品「時と空間」は、グーグルアースでも見ることができる。カッパドキアにある10,500トンもの石が使われ、カッパドキアの役場の呼び掛けの元、地元の人々が協力して完成した。また制作費用のほとんどは、トルコのビジネスマンにより資金提供されている。

作品を構成する石柱の構造物。

地上絵のタイトルと意味

作品には、地域の歴史や自然美がモチーフとなって反映されている。

作品タイトル「リズム・オブ・ライフ」
プロジェクトのタイトルである名前がつけられた地上絵。音符の形状と線がずれているように、人生の予測不可能な旅を意味している。

作品タイトル「リズム・オブ・ライフ」

作品タイトル「ギフト」
カッパドキアの名前はペルシア語の美しい馬の国に由来しているように、古代からカッパドキアにおいて重要な役割を果たしている馬をモチーフ。

作品タイトル「ギフト」

作品タイトル「強さ」
強さの象徴であるライオンは、2つの体を持っており、これはコンヤとアクサライを結ぶ道にあるスルタンハンという街の隊商宿(キャラバンサライ)に掘られたライオンがモチーフとなっている。

作品タイトル「強さ」

作品タイトル「石臼」
パンが主食のトルコにおいて小麦粉は生活にかかせないもの。カッパドキアで採れる小麦を挽く臼は大切な役割を果たしており、ギョレメ村にあった昔の石臼がモチーフ。

作品タイトル「石臼」

作品タイトル「セイレーン」
ギリシャ神話に出てくる、顔が人間で体が鳥の生き物。シャーマニズム(原始宗教の一形態)において下界と天国へ旅する人間の付き添いをすると信じられている。

作品タイトル「セイレーン」

作品タイトル「持続性」
カイセリにある13世紀に作られた王の墓に掘られたデーツの木をモチーフにしている。
デーツの木は、砂漠でも成長するその逞しい生命力と滋養あふれる実がなることから「生命の木」と呼ばれる。


作品タイトル「持続性」(当時の作業風景)

交通手段が困難な場所に位置するため、訪問する観光客の数は限られているが、彫刻の一つが金メッキで輝いていることもあり、その神秘的な姿に訪れる人は魔法の世界に引き込まれた感覚に陥る。

文・写真/横溝絢子(トルコ在住ライター)プロフィール
銀行員として5年以上住んだニューヨークを離れ、トルコの世界遺産都市、カッパドキアの大ファンになり、2011年より移住。現地女性の手仕事、トルコ刺繍(オヤ)を日本にむけて販売(デイジーカッパドキア)、また通訳および旅行コーディネーターを行う。これまでの連載執筆経験、メディア出演実績:NHK BS1「世界で花咲け! なでしこたち」、メディアファクトリー「ヤマザキマリのアジアで花咲け! なでしこたち」、BSジャパン「速水もこみち トルコ食紀行」、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」、毎日放送「世界の日本人妻は見た! 」、NHKラジオ第1「ちきゅうラジオ」、光村図書出版「英語教科書」、小学館「サライ.jp」および「みんなの教育技術」、日経BP「日経ARIA」、朝日新聞出版「ジュニアエラ」など。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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