文・写真/横溝絢子(トルコ在住ライター)

トルコワインの歴史は古く、その始まりは紀元前1650年ほどまで遡ります。当時のヒッタイト王国時代の文献にはワインやワインの価格に関する記述が見られ、ヒッタイト国王がワインを嗜む様子も石板に残されています。

オスマン帝国時代にはイスラム教徒は造酒を禁じられたため、1923年のトルコ共和国の成立まで、国内で大々的な造酒が行われることはありませんでした。今や世界屈指のブドウ栽培面積を誇るトルコですが、その殆どは生食用もしくは加工用(干しブドウやブドウシロップなど)で、ワイン生産用はそのうちの数パーセントです。

しかし、近年のトルコの経済発展により、若者や富裕層にワイン人気が高まっていて、トルコワインの品質も上がってきてます。2010年に入り、ヨーロッパのワインコンクールなどでもトルコワインの受賞が目立ち始めました。

トルコ中央部の高原地帯にある、奇岩群で名高い世界遺産カッパドキア。ここでもワイン造りが行われています。「コジャバー(KOCABAG)と「トゥラサン(TURASAN)」という2大ブランドが有名です。

カッパドキアの小さな村、ウチヒサールにある家族経営の小さなワイナリー「コジャバー(KOCABAG)」は、お手頃価格で良質なワインを買うことができるため、地元のレストランやカッパドキアを訪れた観光客に人気です。

こちらは「トゥラサン(TURASAN)」のテイスティングバー

それでは以下に、トルコでワインに使われている主なブドウ品種とその特徴をご紹介します。どれも聞き馴染みがない品種名と思いますが、トルコワインを楽しむための基礎知識としてぜひ抑えておいてください。

【赤ワイン】
・オキュズギョズ(Okuzgozu)
アナトリア最古とされるブドウ。牛の目と名付けられたブドウは、大粒で肉厚。色の濃いドライワインになります。芳醇で深いコクを感じる味わい。肉料理全般や熟成したハードチーズに合います。メルローのような柔らかさのあるワインです。

・ボアズケレ(Bogazkere)
タンニンの割合が高く、単独では重く、かなり渋みのある荒いワインになるので、上記オキュズギョズと共に醸造されることが多いです。この二つを混合したワインはトルコでは定番です。

これがボアズケレ種のぶどう

・カレジックカラス(Kalecik Karasi)
トルコの最大手ワイナリー、カヴァックルデレ社とアンカラ大学の研究により、品種絶滅の危機から蘇ることになった最上質のブドウ。ワインは、鮮紅色で生き生きとしてかつエレガントで豊かな香り。果実味と軽いタンニンのバランスがとれており、肉料理全般、フレッシュチーズに合います。レーズンを思わせる甘い風味が極めて印象的で、華やかさがあります。

【白ワイン】
・エミル(Emir)
ヨーロッパでも受賞歴が多いのがこちらのブドウを使ったワイン。カッパドキア地方の火山性の土壌で育ったブドウです。エレガントな味わいで、食前酒はもちろん、魚介料理や寿司、リゾットやパスタとも合います。ほのかに甘い爽やかな果実の香りで、口中では綺麗な酸を感じられる、フレッシュな味わいで飲みやすいのが特徴です。

こちらがエミル種のぶどう

以上、今回はトルコならではのワインとぶどう品種についてご紹介しました。もしレストランやワインショップでトルコのワインを見つけたら、ぜひ試してみてくださいね。

カッパドキアのワイナリーでの試飲は無料です。

文・写真/横溝絢子
銀行員として5年以上住んだニューヨークを離れ、トルコの田舎町、カッパドキアの大ファンになり、移住。2011年より開始。これまでの連載執筆経験、メディア出演実績などは以下の通り。地球の歩き方イスタンブール特派員(連載中)、NHK BS1「世界で花咲け! なでしこたち」、メディアファクトリー「ヤマザキマリのアジアで花咲け! なでしこたち」、BSジャパン「速水もこみち トルコ食紀行」、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」、毎日放送「世界の日本人妻は見た! 」、NHKラジオ第1「ちきゅうラジオ」、TOKYO FM「コスモ アースコンシャス アクト」など。海外書き人クラブ所属。

 

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