取材・文/坂口鈴香

【人生100年時代の生き方】100歳までのお金をどうする? 両親が「住宅型有料老人ホーム」に入居した大島さんの場合

もみもみこさんによる写真ACからの写真

親の終の棲家をどう選ぶ? 壊れていく母、追い詰められる父」で紹介した大島京子さん(仮名・50)の両親は有料老人ホームに入っているが、2人部屋ではなく、それぞれ個室を利用している。となると、かかる費用も2倍だ。いったいどれくらいかかるのだろう。ホームに入りたくても、先立つものが……と二の足を踏む人は多いはずだ。今回は、ホーム入居にかかるお金の問題を取り上げてみたい。

ホームのサービスと外部サービス、どちらかよくわからない

大島さんの両親が入居しているのは、「住宅型有料老人ホーム」だ。「介護付有料老人ホーム」とは違い、支払いは少々複雑になる。利用する介護サービスが、ホーム内部のサービスと外部のサービスの二通りがあるからだ。

住宅型有料老人ホームは、「有料老人ホームとサ高住の違いは? 『老後の住まい』7種類の違いまとめ」でも解説したように、すべての介護サービスをホーム内で受ける「介護付有料老人ホーム」とは違い、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と同じように自宅と同じ扱いになる。介護サービスは各自が事業所と契約を結び、訪問介護やデイサービスを利用することになる。介護度が低ければ利用料はおおむね低額だが、介護度が重くなるほど高額になるのが一般的だ。

しかし、この住宅型有料老人ホームと、介護付有料老人ホームとの違いを理解して入居する人は少ない。大島さんもその一人だった。入居してしばらく過ごすうちに、介護付有料老人ホームとの違いを感じることが増えていったという。

「有料老人ホームにいくつかの種類があることは漠然とは知っていました、具体的にどう違うのかはよくわかっていませんでした。兄と父はまったくわかっていません。今、両親は外部のデイサービスを週2回程度と訪問介護、訪問医療と訪問看護を利用しています。これらはホームの利用料金とは別に介護保険で支払います。またホーム内部のサービスとして、洗濯やシーツ交換、オムツ交換、歩行時の安全確認などがあり、これは月額利用料に含まれています。ただ、線引きがよくわからない部分もあり、早朝や深夜の介護や入浴介助、掃除の一部は訪問介護となっているようです。これらはホームからの利用料明細を確認して、ようやくわかるという程度。そうでなければ住宅型有料老人ホームと介護付有料老人ホームとの違いはわからないと思います」

料金明細でどちらのサービスを使っているかを把握するというものの、ホームに入居している高齢者が理解するのはむずかしいのではないだろうか。

イレギュラーな介護への対応は手薄になる

では介護サービスを受ける際に、住宅型有料老人ホームだと感じることはないのだろうか。

「母の失禁が激しかったとき、寝具の汚れ物の始末や母の着替えなどのたびにスタッフを呼んでも部屋で待たされるということがたびたびありました。そのときに、『うちは住宅型なので、基本的に介護は訪問介護でまかなうことになります。こうしたイレギュラーな対応は手薄になるので、手厚い介護がほしければ、介護付有料老人ホームを利用された方がいいです』という説明を受けました。夜間も定期的に見回りしてくれるとはいっても、失禁を見つけて着替えさせてくれるわけではなく、家族が発見してお願いしなければだめなのか、と感じました。スタッフは手のかかる重度の入居者にかかりきりになるので、比較的介護度の低いうちの両親のような場合は、『こちらから訴えない限り放ったらかしだ』と父も言っています」

なおこのホームの対応が、住宅型有料老人ホームすべてに当てはまるわけではない。住宅型であっても、切れ目のない介護を提供している場合もある。住宅型ホームを選ぶ際には、「こういう場合はどうなりますか?」と具体的な例をあげて確認しておいた方がよいだろう。

改築物件なので料金は低額

またこのホームは、もともと社員寮だった建物を有料老人ホームに改築した物件だった。

社員寮をホームに改築したというホームは少なくない。筆者も何か所か見たことがあるが、言われてみれば「確かに」と思う程度で、そう気にならないことが多い。ただ段差が残っていたり、トイレが室内になかったりするホームもある。大島さんの両親が入っているホームは、トイレが室内になく、ほかの入居者と共用なので、尿失禁のあった母・総子さんには不便を感じることもあったという。

その一方で、改築物件であるため、利用料金は平均的な有料老人ホームよりも低額だった。大島さんの両親の入るホームは、前払金はゼロ。月額利用料は18万円ほど。要介護2の父・敏夫さんは、薬代や医療費、デイサービスの利用料などを加えると毎月20~22万円になる。母の総子さんは要介護3だが、薬が敏夫さんより少ないため毎月20万円以下だという。

「同じ系列のホームでも、新築のホームは利用料金がもっと高く設定されていたので、トイレなどの使い勝手は悪くても安い方がいいという人もいると思います」

大島さんの両親のホームにかかる費用がトータルでも20万円前後と聞くと、有料老人ホームにしては安いと感じる人も多いのではないだろうか。近年、サ高住の月額利用料金が高くなる傾向がある一方、前払金ゼロで月額利用料金が20万円以下というリーズナブルな住宅型有料老人ホームも増えてきており、サ高住より有料老人ホームの方がお金がかかるという図式は崩れてきている。

後編に続きます】

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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