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取材・文/坂口鈴香

【人生100年時代の生き方】100歳までのお金をどうする? 両親が「住宅型有料老人ホーム」に入居した大島さんの場合【後編】

大島さんの介護記録。細かい字でびっしりと書き込まれていた

親の終の棲家をどう選ぶ? 壊れていく母、追い詰められる父」で紹介した大島京子さん(仮名・50)の両親は有料老人ホームに入っているが、2人部屋ではなく、それぞれ個室を利用している。となると、かかる費用も2倍だ。いったいどれくらいかかるのだろう。ホームに入りたくても、先立つものが……と二の足を踏む人は多いはずだ。今回は、ホーム入居にかかるお金の問題を取り上げてみたい。
前編はこちら】

* * *

大島京子さん(仮名・50)の両親は、「住宅型有料老人ホーム」に入っている。社員寮の改築物件なので、比較的低額だ。前払金はゼロで、月額利用料は18万円ほど。要介護2の父・敏夫さんは薬代、医療費、デイサービスの利用料などを含めても毎月20~22万円、母の総子さんは要介護3だが、敏夫さんより薬が少ないため毎月20万円以下だという。

2人で毎月40万円以上払えるわけ

大島さんの場合、前払金が不要だったのが大きな魅力だったという。ただリーズナブルとはいえ、月額利用料金は二人で40万円以上。介護サービスの費用や医療費も入っているが、介護度が重くなれば介護保険代はさらに高くなるし、入院をしたりすれば医療費も増える。これから2人が100歳近くまで生きるとすれば、預貯金を取り崩しても、どこかで蓄えが底をつくのではないかという不安はつきまとうのではないか。

大島さんは、この点についてもざっくばらんに教えてくれた。

「父は普通のサラリーマンだったので、収入が特別多かったわけでも、親の財産があったわけでもありません」

そんななか、なぜ大島さんの両親はホームに入るだけのお金を蓄えられたのか。それは母、総子さんの才覚だったという。

「専業主婦だったのに、どこからそうした知識を得たのかわかりませんが、基礎控除と結婚して20年以上経つと利用できる『おしどり贈与』を使って、自分名義の預金に入れたり、もともと住んでいた家の土地を父と共有名義にしたりしていたんです。それで、家を売却したときに母の懐にも大金が入りました。それに、長い間株もやってずいぶん儲けを出していたようです。そして父が定年退職したあと、母は自分の口座にはまったく手をつけず、全部父の口座のお金を使っていたので、ホームに入るときには母の預金額は父より何倍も多くなっていました」

大島さんは、総子さんはまさに「夫のお金は妻のもの、妻のものは妻のもの」を実践したのだと苦笑する。

「正直なところ母のことはあまり好きではありませんが、この金銭感覚のおかげで、今私たち兄妹は親をホームに入れて介護地獄から抜け出せたんですから、そういう意味では母に感謝しなければなりませんね」

母が認知症であるリスクを排除するために遺言書を作成

ここで問題となるのが、認知症が進んでいる総子さんの財産管理だ。

総子さんにかかるホームの料金は、総子さん名義の口座から引き落されるようにしており、通帳と印鑑は大島さんが管理している。総子さんのために使ったお金はレシートを残し、都度記録しているという。

「母に認知症の症状が出る少し前に、父が株や定期預金などすべてを解約して、それぞれの名義の普通預金ひとつにまとめてくれていたので、本当に助かりました」

そして大島さんも舌を巻くほどの総子さんの才覚によって、総子さんの口座の残金はたっぷりあると明かす。

「母が100歳までホームに入っていても大丈夫なので、この点は不安はありません。ただし、問題は父が先に亡くなったとき。母が父の遺産の受取人になっても、署名もできません。母に成年後見人をつけることも考えましたが、調べてみると手続きがいろいろと面倒らしいのでほかにいい方法はないかと兄と考えました」

そこでまず敏夫さんの生命保険の受取人を、総子さんから大島さんと兄に変更した。「母が認知症であることによるあらゆるリスクを考え、排除しました」という。

父親が亡くなったときに遺産の分割協議にも母親は署名捺印できない。これもリスクと考えた大島さんと兄は、司法書士に相談。公証人役場に出向いて遺言をつくり、大島さんと兄を受取人に指定してもらった。

「『あとあと大変になるから、遺言をつくってほしい』と兄から父に説明してもらいました。公証役場には私たちもついていきましたが、最終的には父1人で内容を確認しなければなりません。本人確認や財産がどれくらいあるのかなど、あらかじめ司法書士が作成してくれていた遺言と合致しているかが確認されます。父は得意満面で正確に答えていたようで、無事遺言書が完成しました」

司法書士と公証役場、合わせて30万円近くかかったという。遺言書作成もバカにならない。

これで、考えられる“リスク”はほぼ排除された。しかし、大島さん親子の終活はこれで終わりではない。

「考えていなかったのですが、財産をどう処分するか、遺言執行者を決めなければなりませんでした。これがどうも重要なポイントだったらしく、遺言執行者が指定されていないと、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てなければいけないそうなんです。兄からは『お前に任せる』と言われたので、私が遺言執行者になりました。執行者が一人で財産を処分する手続きをしなければならないので、これが大変だろうなと覚悟しています」

「次は義母と自分たち夫婦、それから独身の兄のことも考えないといけませんね」と、大島さんの終活はまだ続きそうだ。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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