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ホロコーストで消えた「ピンクトライアングル」は、なぜLGBTQのシンボルになったのか?【世界が変わる異文化理解レッスン 基礎編13】

文/晏生莉衣
ホロコーストで消えた「ピンクトライアングル」は、なぜLGBTQのシンボルになったのか?【世界が変わる異文化理解レッスン 基礎編12】ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックと、世界中から多くの外国人が日本を訪れる機会が続きます。楽しく有意義な国際交流が行われるよう願いを込めて、英語のトピックスや国際教養のエッセンスを紹介します。

* * *

ヨーロッパで進むLGBTQの人々への理解と差別禁止の根本には、ホロコーストという恐ろしい人権侵害の経験がある―― 前々回前回のレッスンで触れてきたこの歴史的背景について、今回は掘り下げて考えてみたいと思います。

ホロコーストは、誰もが知る20世紀の人道上の悲劇です。ナチス政権下、ドイツの支配民族で「優性人種のアーリア人」を脅かす「劣性人種」とされたユダヤ人や一部の民族が、組織的な差別、迫害を受け、強制収容所に送られて集団的に殺害されました。

それと同時に、ナチスから国家の敵とみなされた人々も迫害の対象となって、その中に男性同性愛者も含まれていたということは、長い間、あまり知られてきませんでした。これらの人々への迫害はユダヤ人迫害と違って人種的な差別ではなく、ドイツ社会にとって有害だというレッテル貼りによるものでした。男性同性愛者はアーリア人の人口増加に役立たない存在とみなされ、迫害された男性同性愛者の多くは、迫害する側と同じドイツ人でした。同じように、ドイツ人の心身障害者もアーリア人の純性化に無用とされて、多くの障害者が強制的に安楽死させられました。

ナチス秘密警察による厳しい取り締まりが始まった

ドイツでは以前からホモセクシュアルは違法とされていましたが、取り締まりは緩やかなものでした。ところが、総統となったヒットラーによる独裁が始まると、同性愛を罪と定めた刑法175条は改正されて処罰の対象が拡大され、秘密警察ゲシュタポによる同性愛者狩りが始まったのです。

こうして、第二次世界大戦が終わる1945年までの間に、約10万人が同性愛の疑いをかけられて逮捕され、約5万人が有罪となって投獄されました。そのうちの5千人から1万5千人が強制収容所へ送られ、その多くが命を落としたと言われています。記録は残っておらず、正確な犠牲者の数は誰にもわからないというのが本当のところです。

強制収容所では、収容された人々は囚人番号に加えて、色の違う逆三角形の布のマークを囚人服につけられ、グループ分けされていました。ユダヤ人は黄色、政治犯は赤、刑事犯は緑、反社会分子とされた人たちは黒、新興宗教信者は紫、ロマ人は茶色、そして男性同性愛者はピンクのトライアングルをつけられていました。刑法175条には女性の同性愛は含まれていなかったので、処罰の明確な対象になっていなかったものの、反社会的とみられて収容され、黒のトライアングルをつけさせられた女性たちもいたと言われています。

ピンクトライアングルをつけられたグループは、収容所の中で最も低い位置づけをされ、過酷な強制労働や虐待、人体実験も含めて、親衛隊SSから他のグループよりもさらに侮蔑的で残忍な扱いを受けました。

強制収容所から生還しても、なお続いた恐怖の日々

そして、恐怖は第二次世界大戦終結後も続きました。戦後のドイツでは、分割された東西ドイツどちらにおいても刑法175条は有効のままで、生き延びて収容所から解放された後に、同性愛の罪で再逮捕されてしまう人たちが多くいたのです。身分は相変わらず犯罪者だったので、ピンクトライアングルの囚人はホロコーストの犠牲者とは認められず、強制収容に対してなんの戦後補償も与えられませんでした。

ナチス政権が取り締まり強化のために加えた改正条項が、刑法175条から削除されたのは東ドイツでは1968年、西ドイツでは1969年になってから。東西ドイツ国家成立後からそれまでの約20年間で、さらに約10万人の男性が逮捕され、約5万人が有罪判決を受けたとされています。西ドイツではそれ以後も改正前の刑法175条が残り、完全に廃止されて同性愛が非犯罪化されたのは、ベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが統一された後の1994年のことでした。

こうした状況に置かれ、ピンクトライアングルの人たちは、強制収容所から生還後も、長い間、沈黙を続け、自分たちの体験を語ることはありませんでした。ユダヤ人の収容については、収容所を解放した連合軍が大量殺戮の跡や積み上げられた遺体の山を目の当たりにし、その惨状は世界の知るところとなりました。ユダヤ人生存者の証言も集められ、悪夢のようなホロコーストの実態が広く知られるようになる一方で、ピンクトライアングルの受刑者の存在や、彼らが受けた人権蹂躙については、歴史の中に埋もれていったのです。

生存者が初めて語った悲しみの記憶が出版される

忘れられた犠牲者となっていった、ピンクトライアングルの囚人たち。その沈黙を破ったのは、オーストリア人生存者のヨーゼフ・コーホートさんでした。

オーストリアは第二次世界大戦勃発の前にドイツに併合されたため、オーストリアでもナチス政権によるホロコーストが実行されました。オーストリア在住のユダヤ人が強制連行されたほか、オーストリア人の男性同性愛者も刑法175条によって逮捕され、多くが収容所に送られたのです。

ウィーンで生まれ育ったヨーゼフさんは、24歳の時にゲシュタポに連行されて投獄された後、6年間を強制収容所で過ごしました。ヨーゼフさんが収容所での壮絶な経験を知人に語り始めたのは、解放されてから20年の年月が過ぎた頃のこと。その知人が書き留めたヨーゼフさんのメモワールが本にまとめられて、オーストリアで同性愛が非犯罪化された翌年の1972年に、『ピンクトライアングルをつけた男たち』(原題はドイツ語で “Die Männer mit dem Rosa Winkel”)というタイトルで出版されました。

これによって、ホロコーストで強制収容所へと送られたホモセクシュアルの人たちの存在が公になり、男性同性愛者が強制収容所で受けた人間性を破壊するような残虐行為の数々が明らかにされたのです。

そしてまた、ナチス政権下、同性愛の疑いで家族の一員が逮捕されると、残された家族も周囲から誹謗中傷を受け、スティグマに苦しむ悲惨な人生を送ったという事実も、ヨーゼフさんの家族についての話から伝えられています。ヨーゼフさんの父親は公務員で、良いポストに就いていましたが、息子が同性愛の罪で連行されると職を失ってしまいます。それでも、愛情深く、息子の同性愛に理解があった両親は、周囲からのひどい侮辱や嫌がらせに耐えながら、収容所宛に手紙や食料を送って息子を支えようとし続けました。しかし、いくら試みても息子を収容所から救うことができず、絶望が限界に達した父親は、「神よ、息子をお守りください」というメモを残して、大戦が終わる前に自殺してしまいました。

そして「ピンクトライアングル」は、LGBTQの象徴になった

ヨーゼフさんは解放後にウィーンに戻って母親と再会し、その後は、一市民として働きながら、出会ったパートナーと共につつましく暮らしました。その家族を守るため、執筆した知人はペンネームを使い、メモワールの中でヨーゼフさんの名前も出していません。

そして、解放後のヨーゼフさんのひとつの悲憤となったのは、ドイツと同じくオーストリアでも、ピンクトライアングルの人たちは、政府からはなんの戦後補償も受けることができなかったことでした。補償を得るために、ピンクのカテゴリーを赤の政治犯に変えて申請するようアドバイスを受け、実際にそのように変更して補償された元受刑者もいたということですが、ヨーゼフさんはそのアドバイスを断り、政府からの補償を受け取ることなく、1994年にその生涯を終えました。

しかし、ヨーゼフさんは、隠されていた事実を恥じることなく外の世界に伝えたことで、抑圧しようとしてきた記憶から自分自身を解放し、ありのままの自分自身に対するプライドという、政府からの補償以上のものを手にしたのです。

この本を契機に、同性愛者に向けられたヘイトの象徴だった「ピンクトライアングル」は、ホロコーストの痛ましい過去と、なお続く迫害のシンボルとして、欧米のホモセクシュアルの活動家たちによって使われ始め、1980年代には同性愛者への偏見や差別、暴力と戦う抵抗のシンボルとなりました。ヨーゼフさんの本は色々な言語に翻訳されたほか、アメリカでは本を題材にしたブロードウェイの劇や映画にもなって、世間一般に広く問題提起することにもつながりました。ヨーゼフさんに続いてカミングアウトする、他の元ピンクトライアングルの生存者も出てきました。

そして今、ピンクトライアングルはホロコーストの中で埋もれていた一面を伝える貴重な証しとなり、LGBTQのプライドと解放のシンボルとして、世界の各地で、ピンクトライアングルの記念碑が建てられています。

違いをポジティブに受け止める社会を誇りに思う

この「プライド」という言葉。ヨーロッパ、特に、同性婚が合法化された国々(レッスン11参照)では、性的少数者が自分自身に抱く誇りという意味だけでなく、その社会に住む一般の人たちのプライドという意味もまた、強く感じられます。

ホロコーストという組織的なマイノリティ排斥の過去を持つヨーロッパで、自分たちの社会がその負の歴史を乗り越えて、時をかけて多様な人間のあり方を排除しない成熟した社会へと変容を遂げたという、人としての自分たちの努力と、ポジティブな共生の精神にあふれた自分たちの社会を誇りに思う「プライド」です。

日本でも、ここ数年の間に「LGBT」という言葉が社会に急速に広まってきました。平等な権利を求める性的少数者の声に呼応して、日本の様々な大企業がLGBTフレンドリーな会社であることをアピールし始め、LGBT団体が東京で行うパレードには、政治家が競うようにして参加するようになりました。そのパレードでシンボルとして使われているレインボーフラッグを、ニュースなどで目にする機会も多くなりました。

その一方で、ピンクトライアングルについては、なぜ、ピンクの逆三角形がLGBTQのシンボルとなったのか、その史実を含め、日本では一般的に、今でもあまり知られていないのではないでしょうか。

そうした状況をヨーロッパの経験に重ね合わせると、日本では、何をよりどころとしてLGBTQの人々の人権保護を進めるのか、と考えずにはいられません。ホロコーストのような人道上の悲劇を二度と繰り返さないという共通の動機や、共有する価値観なしに、どうやって進めることができるのか。日本の社会には、何が必要なのでしょうか。

2002年、ドイツ議会は、戦後も刑法175条を使って同性愛者を裁き続けたことに遺憾の意を表明し、ナチス政権下で出された有罪判決を無効としました。戦後に出された有罪については2017年6月になってようやく取り消され、同時に、刑法175条によって犯罪者という烙印を押されたすべての人たちについて、補償を行う決定がされました。それに先立って、シュタインマイヤー大統領はスピーチの中で、被害を受けた同性愛者に対して謝罪し、その人たちが何十年にもわたって苦しみと不正義を受け、愛を失ったことについて許しを請いました。

こうして、刑法175条で運命を翻弄された同性愛者たちが、奪われた名誉と尊厳を取り戻したのは、ほんの2年前のことです。約5千人の生存者の多くは、高齢となっていました。

議会は、それに続いて同性婚合法化法案を可決。ドイツでも、結婚の権利の平等が認められることになったのです。

文・晏生莉衣(あんじょうまりい)
東京生まれ。コロンビア大学博士課程修了。教育学博士。二十年以上にわたり、海外で研究調査や国際協力活動に従事後、現在は日本人の国際コンピテンシー向上に関するアドバイザリーや平和構築・紛争解決の研究を行っている。

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