取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「私が道を一度も踏み外さなかったのは、いつも側にいてくれた祖父のおかげです」と語るのは、由衣さん(仮名・37歳)。彼女は現在、都内にある広告代理店で働いています。目を見てゆっくりと話すところや、丁寧な言葉遣いなどから育ちの良さを感じさせる女性です。
祖母の厳しい躾に母は無関心。祖父だけが庇ってくれた
由衣さんは福島県出身で、両親と母方の祖父母との5人家族。両親はともに公務員で仕事などが忙しく、小さい頃の面倒は祖父母が見てくれていたと言います。
「祖母は躾が厳しくて、祖父はただただ優しかった。祖母は家のものを勝手に食べることを禁じていたんですが、私が小さい頃は我慢できずに食べちゃうことがあったんです。その度に木でできた定規のようなもので手を叩かれていました。箸の持ち方や姿勢なども崩す度に叩かれていましたね……」
その厳しい躾は母親の前でも行われていたそう。しかし母親は一度も止めに入ってくれなかったと由衣さんは語ります。
「祖母が厳しいのは私だけではなく、母にも小さい頃はそうだったんだと思います。だから、母からしたら祖母の躾は普通なんです。だから私が目の前で怒られていても止めには入ってくれませんでした。
私が怒られて泣いていると、庇ってくれたり、慰めに来てくれるのは決まって祖父だけでした。誰にもバレないようによくお菓子を持ってきてくれたことを覚えています。小さい頃は数えきれないくらい祖父に慰めてもらっていましたね」
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