取材・文/ふじのあやこ

【娘のきもち】父の単身赴任で家族は離れて暮らすことに。女3人の中、自分がしっかりしなくてはという自覚が芽生えた~その1~

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「父の代わりが完全にできるとは思っていません。ただ私が母親の側にいたかったから」と語るのは、真世さん(仮名・37歳)。彼女は現在、大阪市外の企業で働いています。お話をしている間ずっと笑顔を絶やさず、大きな声で笑う姿や少し早口なところから、明るく元気な女性といった印象を受けます。

母親はずっと父親に敬語。覚えているのはウイスキーを飲む父の姿と、一緒に散歩に行った笑顔の母親

真世さんは大阪府出身で、両親と5歳下に妹のいる4人家族。両親がケンカするところは見たことがなく、さらには対等に話している姿も記憶にないと言います。

「両親は同い年なんですが、父親が典型的な亭主関白の家で、母親はずっと父親には敬語で話していました。父は家ではそこまで話すタイプではなく、怒ることもまったくなかったので、そこまで怖かった印象は残っていません。覚えている父親の姿は、キッチンにあるテーブルでの晩御飯が終わると居間に移動して、棚に飾っているお気に入りのウイスキーから水割りを自分で作って、テレビを見ながらゆっくりと飲んでいるところです。その間一切言葉を口にすることもなかったし、酔っぱらって絡んでくるなんてこともありませんでした。ただただ静かにお酒を飲んでいる感じでしたね」

母親は結婚してからずっと専業主婦。自宅には雑種の犬がいて、小さい頃は母親と犬の散歩に行くことが日課だったそうです。

「犬は知り合いから譲ってもらった子で、私と妹が必死でお願いして飼ってもらいました。犬は賢いからうちの家で一番偉いのは父親だとわかっていたみたいで、父親の前ではおとなしいのに、母親や私たちの前ではすごくはしゃいで、その子は私が学生の頃に亡くなったんですが、ずっとお世話のかかるやんちゃな子でした。混血で紀州犬の血が入っていたので大きくて、小さい頃はリードを引っ張られる力に勝てなくて、母親と一緒にリードを持っていましたね。母親も父の前ではしおらしいタイプだったんですが、私たちの前ではいつも笑顔で明るい人で、犬のことをとても可愛がっていました。父の前で猫を被っていたところはそっくりだったから、1人と1匹は気が合っていたのかもしれません(笑)。その子も母親に一番懐いていましたから」

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