取材・文/ふじのあやこ

【娘のきもち】誰かに依存し続ける母親。その姿は頼りなく、自分がしっかりしなくては思い続けた~その1~

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「あの2年間は決して犠牲になったとは思っていません」と語るのは、律子さん(仮名・35歳)。彼女は現在、埼玉県で6歳の子供を育てながら、週の半分は自宅でネイルサロンをひらいています。ショートボブの髪はふんわりとカールしており、アイシャドウやチークなどのオレンジ色がよく似合う、少し日に焼けた肌が印象的。ネイルには今流行りのくすみカラーが施されており、全体的にオシャレな雰囲気を感じました。話し方もハキハキしていて、好感を持てます。

ほんわかした母に細かい父。一度も夫婦ゲンカを見ることはなかった

律子さんは埼玉県出身で、両親と6歳上に兄のいる4人家族。空調機や電子システムを扱う会社の営業として働く父親と、8歳年下の専業主婦の母親の出会いはお見合い。母親は20代前半で結婚したそうで、少し頼りないところがあるそう。その分、父親は厳しかったと言います。

「母親は社会経験が少ししかなく、どこか世間知らずというか、おっとりしていました。怒られるのはほとんど父親からでしたね。小学校の頃は暗くなるまでに帰らないといけないルールがあったんですが、それを破ったら、母親には注意されないのに夜帰ってきた父親から怒られていました。母親が報告というか、告げ口していたんですよ」

忙しく仕事に追われる父親だったそうですが、ゴールデンウィークと年末には必ず家族旅行に連れて行ってくれていたそう。しかし、その旅行中はマナーについてよく怒られていた記憶が残っているとか。

「旅館に着くと、部屋で座卓にとりあえず座ろうとすると『そこは上座だから座ってはいけない』とか言われたり、旅行先なのに食事中は会話もご法度。平日より父親と長時間一緒なのが旅行くらいなので、旅行はまったくリラックスできていませんでした。兄は大学に進学した時から、学業が忙しいとの理由で家族旅行に参加しなくなって、父の小言を私が一点に引き受けている感じでしたね」

子供には厳しいイメージのあった父親ですが、母親には優しかったと言います。夫婦ゲンカは一度も見たことがないと律子さんは語ります。

「夫婦仲は本当に良かったですね。母は掃除が苦手で、新聞やチラシが部屋に散らばっていたり、洗濯ものを畳まずにずっと同じ場所に積まれていたり、とにかく部屋が汚いことが多かったんです。それに母は料理も不得意で……。仕事から帰ってきて、部屋が散らかっていても、ご飯が用意されていなかったとしても父は母を怒ったりはしなかった。そこから父がご飯を作ってくれることもありました。月に数回は母親が好きな洋菓子店でケーキを買って帰ってきていましたし。私たちの分ももちろんあるんですが、母親はモンブランが好きだったのでモンブランの割合が多かった記憶があります(笑)」

祖父が亡くなったことで家族のバランスが崩れ、母は実家から戻らないように

律子さんが中学生の頃に祖父が亡くなったことで、母親は祖母の家で過ごす時間が多くなったそう。家で家族が揃わない時間が増えていったと語ります。

「母の実家は家から2駅ほどで、祖父が病気で亡くなってから母は祖母の様子が気になるという理由で、祖母の家にほぼ毎日行くようになりました。私も中学の時は反抗期に入っていたこともあり、母親と口を聞くのもしんどかったので別に気にはしていなかったんです。ご飯が用意されていないことなんて、昔からよくあったし。私よりも父がダメージを受けているようでしたね。でも、私にはどうすることもできなかった。ただ母親の代わりに父のご飯を作るようになったのはこの頃からですね」

母親の実家暮らしはエスカレート。夜にも帰宅しないことが増えたものの、父親は静観を貫いていたよう。母親と祖母を引き離したのは、母親の兄だったと言います。

「その頃には兄はすでに社会人になり、家を出ていたので一軒家では父親との2人暮らし状態が続いていました。父は相変わらず何も行動しないし、私は母親と顔を合わせたら面倒くさいことになりそうだからと避けてしまっていて。

そんな姿に気付いてくれたのが母の兄、伯父でした。母親は3人兄妹の真ん中で兄と妹がいたんです。叔母のほうは地方に嫁いでいたんですが、伯父は東京にいて。詳しい話はわかりませんが、伯父の家に祖母が引き取られて、母親は自宅に帰ってきました。

最初はふさぎ込んでいた母親だったけど、徐々に元気を取り戻して家族の日常が戻ってきていました。でも、そんな時に祖母が転んでしまったことで足が不自由になり、伯父の嫁が同居を拒否するようになってしまって……」

薄々気づいていた親族の揉め事。祖母を引き取ることを了承した父親が助けを求めたのは律子さんだった。
~その2~に続きます。】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

 

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