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ギターの名手だった萩原朔太郎の愛用ギター【文士の逸品No.06】

◎No.06:萩原朔太郎のギター

萩原朔太郎のギター(前橋文学館蔵、撮影/高橋昌嗣)

文/矢島裕紀彦

大正5年(1916)1月、29歳の萩原朔太郎は友への手紙にこう記した。

「八日に我々の洋楽会の第一回の演奏会があります。袖口からあの
金のカフスボタンを光らせてギターを弾くところを御想像下さい」

この前年、朔太郎はマンドリンとギターの合奏を目的とするゴンドラ洋楽会を組織。本格的な音楽活動に没頭していた。マンドリンは斯界の先駆者たる比留間(ひるま)賢八らに習い、ギターは音楽学校で。素人離れの腕前だった。

研ぎ澄まされた音感は、詩作品にも反映。犬の遠吠えを「のをあある とをあある やわあ」と綴るなど、独得の擬音を案出。リズム感や押韻でも、抜群の冴えを見せた。

明治末期に求めたという愛用のギター(群馬県前橋市・前橋文学館蔵)は、イタリア製の最高級品。通称「つばめ印」。胴体部分につばめを模した洒落た貝殻細工が施されている。練習用に使い込んだものと違い、ネック部分に擦り減った形跡はない。思うに、晴れの舞台で使用したものか。

晩年好んだ古賀メロディを奏でるには、エキゾチックに過ぎる外観。若き日の詩人のダンディズムが匂い立つ。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。『サライ.jp』で「日めくり漱石」「漱石と明治人のことば」を連載した。

写真/高橋昌嗣
1967年桑沢デザイン研究所 グラフィックデザイン科卒業後、フリーカメラマンとなる。雑誌のグラビア、書籍の表紙などエディトリアルを中心に従事する。

※この記事は、雑誌『文藝春秋』の1997年7月号から2001年9月号に連載され、2001年9月に単行本化された『文士の逸品』を基に、出版元の文藝春秋の了解・協力を得て再掲載したものです。

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