娘への嫌悪は何度も感じていた

嘉之さんは完璧主義だ。文武両道で美しく、明るくハキハキしていて他人に優しい行動をとる人を理想としているようにも感じられる。

「そんなの当たり前じゃないですか。現にウチの息子がそうです。名門大学を出て官僚になり、スポーツもやって、恋愛も遊びもそこそこして、今は立派な父親をしている。4歳の孫がいるんですけどね。息子は我が子に田植え体験をさせたり、キャンプに連れて行ったりして、父親としての役割をしっかり果たしている。“陰キャのお姉ちゃんが恥ずかしい”ってよく言っていますよ」

娘は、嘉之さんの妻と同じ名門女子大を出るも、就職氷河期で正社員採用はされなかった。そこでパン会社の契約社員になり、数年間勤務して正社員に登用される。しかし、2年ほど職場でいじめの標的になった。耐えていたが円形脱毛症と心の病を発症し、休職から退職する。

「あの時は“仕事も全うできない奴は、生きている資格がない”と思ったんです。妻はやせ細った娘に寄り添い、ずっと一緒にいましたけれどね。まあ、その後いろいろあって、娘はIT関連会社の事務になった。パン会社の経験から、企画開発や営業など総合職の仕事は、大変であり辛いとわかったので、事務方に回ったのです。まあ、真面目だけが取り柄の娘にピッタリな仕事だとは思いますが、もう少し張り合いを見せてくれてもいいんじゃないかと思っていたんですよね」

期待していた孫も、娘には望めなかった。

「人ができることがまともにできない。今の世の中は多様性が大切だと言って、人として当たり前のことを“やって当然”と言えない空気が流れている。私は他人が何をしようが、興味もなければ関与もしない。結婚しようが、子供を産もうが産まない選択をしようがどうでもいい。でも自分の娘に対しては、そうとは思えない。定職に就いて、自分の家族を持ってほしい。死んだ妻も、娘には“あなたはそのままでいい”と言っていたけれど、私に対しては、“あの子は困ったものだ”と言っていた」

娘は、さみしがり屋なのにふてぶてしいのだという。

「かわいげがないんです。だから誰からも愛されない。あいつが32歳の時に、22歳の外国人の男性にハマり、相当な金を相手に貢いだことがあったんです。外国の男性は“きれいだね”“かわいいね”と言う。そういう言葉にクラっときて、確か1000万円近い金を持っていかれたはず。それでコリたと思っていたら、このざまですよ」

【妻が娘のためにと残した300万円の預金口座の残高が0円に~その2~に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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