文・石川真禧照(自動車生活探険家)

経済性や使い勝手の良さを背景に、新車販売台数の4割を占めるまでになった軽自動車。室内をさらに広くする工夫や、普通自動車に迫るさまざまな装備を搭載するなど、まだまだ注目したい点が満載だ。

初代誕生から40年以上も同じ車名の軽乗用車はアルトだけ。車体色は12色だがうち4種は車体と天井の色が異なるツートーンカラー。

スズキが軽自動車のアルトを発売したのは1979年(昭和54)のことだった。当時の軽自動車はもっとも低価格の車でも60万円以上。その中で47万円という価格で発売されたのがアルトだった。

スズキが軽自動車を初めてつくったのは1955年(昭和30)のこと。以来、日本の足として、低価格な自動車を提供し続けてきた。軽自動車は一時期、内外装を豪華にし、普通乗用車に追従した時代もあった。その中でスズキはもう一度、原点に立ち帰る、という目標を掲げ、アルトを発売した。

そのアルトにこのたび9代目となる新型が登場。昨今、軽自動車も100万円以上、という時代に廉価版は90万円台という価格を設定した。

今回、取り上げるのは、アルトでは初となるマイルドハイブリッド車なので価格も100万円を超えているが、その内容は安全面も含めて排気量1L以上の乗用車と同等か、さらに充実した仕様だ。

先代よりも全高が50㎜も高くなった。全長、全幅は軽自動車枠ギリギリなので変わらない。
前席前中央の7インチ液晶画面はオーディオやスマホアプリとも連携させることが可能。
車体周辺の状況を目で見ることができる全方位モニターは、全グレードでオプション装着。
アクセサリーソケットとUSB電源ソケット2個は上級グレードには標準装備されている。

ドアの上縁を高くする工夫

近年、軽自動車も背の高い車に人気が集まっている。アルトはSUV(多目的スポーツ車)ではなく、普通の2ボックス乗用車だ。全高は1625mmなので都会の立体駐車場にも入り、日常使いに便利。室内も前、後席ともに広い。とくに後席は足元、頭上の空間ともに広く、身長180cmクラスでも充分に座ることができる。

乗降性も、ドアの上縁を高くする工夫がされているので、無理な姿勢を強いられることはない。

後席の定員は2名だが、こうした工夫があれば長距離ドライブの疲労度は他の軽自動車に比べて少ないだろう。

前席のシートヒーターはほぼ全グレードに標準装備。
後席は2人乗りだが、足元、頭上の空間ともに広い。後席ドア窓は全開する。
後席は背もたれが一体式で前倒でき、ほぼ平らになる。トランク部分の開口部も路面から高くないので、荷物の積みおろしはラク。

マイルドハイブリッドシステムを初導入して高速も街中も燃費向上

テールランプを可能なかぎり車体外側に置くことで車幅を広く見せている。個人的にはタイヤは同サイズの高性能仕様に交換したい。

改めて新型アルトの仕様を見ると、その充実ぶりがわかる。初導入のマイルドハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンとモーターを搭載し、電池も2種類備えている。発電は減速時に行ない、その電力をふたつの電池に溜め、発進時や電装品の作動に使うという仕組みだ。発進時やエアコン使用時の燃料の節約ができるわけだ。

実際にその効果は大きく、カタログ上の燃費は27.7㎞/Lだが、高速道路での巡航では30㎞/L以上、街中でも24㎞/L以上を達成した。高速走行ではエンジン音も耳障りな音は抑えられ、操縦安定性は、やや重めの操舵力で直進性もしっかり感があった。これらは長距離ドライブにおける疲労の軽減に役立っている。

車体前部には3気筒ガソリンエンジンとモーター機能付き発電機が搭載されている。エンジンは高回転走行でも音は耳障ざわりでない。

さらに心強いのは先進予防安全技術の高さだ。

前方の車両や歩行者、自転車は2基のカメラで検知。衝突のおそれがあれば警告ブザー、自動ブレーキで衝突回避を行なう。標識認識やすれ違い接触防止支援など安全運転を手助けしてくれる装置が配備されている。最新の軽自動車の安全運転支援の技術を充実させた新型アルトなら、安心してドライブを楽しめそうだ。

スズキ/アルト HYBRID X(2000)
全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:710㎏
エンジン:直列3気筒DOHC 657㏄ モーター::直流同期
最高出力:49PS/6500rpm:2.6PS
最大トルク:5.9㎏-m/5000rpm:4.1㎏-m
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:27.7㎞/L(WLTCモード)
使用燃料無鉛:レギュラーガソリン 27L
ミッション形式:CVT
サスペンション 前:ストラット式 後:トーションビーム式
ブレーキ形式 前:ディスク 後:ドラム
乗車定員:4名
車両価格125万9500円
問い合わせ先:お客様相談室 電話:0120・402・253

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年7月号より転載しました。

 

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