文/石川真禧照(自動車生活探険家)
F1などの競技で培かった技術を活かした高性能な車づくりに定評のあるホンダ。同社初のハイブリッド車が5年ぶりに日本市場に復活した。独自の動力システムを搭載する魅力満載の4ドアセダンだ。
ホンダ初のハイブリッド車として、1999年に発売されたのがインサイトである。初代はふたり乗りの2ドアクーペだった。それより2年早く登場したトヨタのハイブリッド車プリウスが5ドアの実用車であったのに対し、ホンダ
はスポーツカーのイメージをハイブリッド車でも打ち出した。
2代目は車体形状を大幅変更し、実用重視の5ドアハッチバックとして2009年に登場。’14年まで販売された同車は、200万円を切る低価格で評判を呼んだ。販売台数でプリウスを上回った時期もあり、ハイブリッド車の普及にひと役買ったといえる。
3代目は昨年末に登場した。2代目の販売終了から約5年ぶりのことで、国内販売が開始された新型インサイトは、現行のプリウスよりも大きく、中型4ドアセダンとして甦った。主市場を北米に定めたことによる大型化である。
シフトレバーは存在しない
新型インサイトのガソリンエンジンは1.5L。モーターを動かす電池は後席下に格納されている。通常、オートマチック車は走り出す前に走行モードを切り替えるシフトレバーをDレンジに入れるが、同車にはシフトレバーはなく、助手席との間に備わるボタンで前進や後退、駐車などのモードを選択する。Dボタンを押すと走行準備完了となる。
アクセルペダルを踏み込み、ゆっくり走り出す。床下という車体の最下部に電池を搭載しているので、峠などの急カーブや高速道路でも非常に安定している。乗り心地はやや硬めだが、アクセルペダルの操作に対する反応はよく、加減速はじつにスムーズだ。
ふたつのモーターを併用し、燃費性能と静粛性を高める
エンジンとモーターを搭載するハイブリッド車は、その構造によって大きくふたつのタイプがある。ひとつは、タイヤを駆動させるモーターへの電力供給のためだけにエンジンを使うタイプ。もうひとつは、エンジンとモーターが共にタイヤの駆動源となるタイプだ。
後者の場合、高速走行やアクセルを強く踏み込んだ時でもエンジンからのエネルギーを一度電気に置き換え、モーターがタイヤを駆動させるので、燃費が意外によくないという現実があった。高速走行時はエンジンで走行するほうが効率がよく、燃費も向上する。
そこでホンダは発電用と駆動用のふたつのモーターを使い、高速走行や高負荷時の効率を高めたハイブリッドシステムを開発した。
発進時や街中走行は電池の電力でモーターのみを駆動させるEV走行、加速時などはエンジンで発電した電力によるモーター走行、そして高速や高負荷時は直接エンジンの力だけで走行する。
新型インサイトは、この3つの走行モードを状況に合わせて使い分ける「スポーツハイブリッドシステム」を採用。燃費や静粛性、デザイン性にも優れた、まさに新世代のエコカーである
【ホンダ/インサイト EX】
全長× 全幅× 全高:4675×1820×1410mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1390kg
エンジン/モーター:直列4気筒DOHC/交流同期電動機 85kW
最高出力:109PS/6000rpm:131PS/4000~8000rpm
最大トルク:13.7kgf-m/5000rpm:27.2kgf-m/0~3000rpm
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:25.6km/L(WLTCモード)
ミッション形式:電気式無段変速機
サスペンション:前/マクファーソン 後/マルチリンク
ブレーキ形式:前/ベンチレーテッドディスク 後/ディスク
乗車定員:5名
車両価格:324万円
問い合わせ:お客さま相談センター 電話:0120・112010
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年7月号より転載しました。