貼絵で知られる山下清ですが、油彩やペン画も多数手がけています。その中でも清がライフワークとして挑んだ《東海道五十三次》シリーズは、遺作となった作品です。
生誕100周年を記念して、《東海道五十三次》の全作品を版画で紹介する展覧会が開かれています。(10月2日まで)

《東海道五十三次・富士(吉原)》 (版画)
(C)Kiyoshi Yamashita/STEP east 2022

本展の見どころを、掛川市二の丸美術館の学芸員、石井佳奈子さんにうかがいました。

「“放浪の天才画家”山下清 [1922(大正11)年-1971(昭和46)年]は、行く先々で出会った風景や人々を緻密で精巧な貼絵で表現し、その作品は今なお多くの人々に愛されています。生誕100年を迎える今年、清の遺作となった《東海道五十三次》の版画全55点をご覧いただきます。 

《東海道五十三次・皇居前広場(東京)》 (版画)
(C)Kiyoshi Yamashita/STEP east 2022

《東海道五十三次》は、画家としてすでに高い評価を得ていた清が、晩年のライフワークに「いつまでも残る大作を描こう」と選んだ題材でした。《皇居前広場》は、騒々しい日本橋からのスタートではなく、静かな皇居前広場をビルの屋上から半日近く眺め描いた作品です。

皇居前の山下清

本作は放浪時に何度も訪れ思い出の詰まった東海道を、約4年間にわたり取材しスケッチした素描画がもととなっています。残念ながら病に倒れ貼絵にはなりませんでしたが、最後の秀作として広く知られています。マジックによる点描で表現された東海道の風景画は、私たちが忘れかけていた郷愁や、自然の空気・香りまでも運んでくれるようです。
展覧会では作品とともに彼の言葉が添えられます。

《東海道五十三次・掛川(小さな城)》 (版画)
(C)Kiyoshi Yamashita/STEP east 2022

“むかしお城に住んでいたさむらいの大将は 軍隊の大将とちがって 部下をたくさんもってる人もすこししかもってない人もいたんだな 掛川の城は小さいので 部下もすくないし あまりえらくない大将が住んでいたのかと思ったら 山内さんという あとで高知の城の大将になった人が 生まれてはじめて住んだ城がこれなんだな おかあさんはいたのかな いたら一番喜んだのは おかあさんかな 奥さんがいたとしたら どっちだろう”

これは掛川の作品に添えられた、山下清が掛川の地について語った言葉です。
独特の語り口で表現される言葉から、清が目にした風景を彼の心の内を感じながらお楽しみください」

たしかに昔はこうだったと懐かしく心に沁みる風景!! 会場で間近にご鑑賞ください。

《東海道五十三次・三条大橋(京都)》 (版画)
(C)Kiyoshi Yamashita/STEP east 2022

【開催要項】
生誕100周年記念 山下清が描く東海道五十三次 
会期:2022年8月4日(木)~10月2日(日)
会場:掛川市二の丸美術館
住所:静岡県掛川市掛川1142―1
電話:0537・62・2061
開館時間:9時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:8月8日(月)、8月22日(月)、9月12日(月)、9月26日(月)
https://k-kousya.or.jp/ninomaru/
料金:HP参照
アクセス:HP参照

取材・文/池田充枝

 

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