今年の11月に約80年の歴史を閉じることになる「築地市場」。そのドキュメンタリー映画が完成しました。題して『TSUKIJI WONDERLAND』(築地ワンダーランド)。
いまや、築地市場は「TSUKIJI」と呼ばれて、世界中から東京へやってくる観光客の一番の名所になっています。完成した映画は、その「築地」の歴史をたどりながら、市場の24時間をくまなく追いかけています。
「築地市場」は「場内」と「場外」の二つに分かれていますが、いわゆる仲卸の店が軒を並べる「場内」に出かけ、歩いているうちに気が付くのは、夏でも魚の匂いもしなければ、蝿すら一匹もいないこと。鮮度の高い魚が、その質を落とすことなく管理されていて、信じられないほどに清潔なのです。
これは、「魚を生で食べることが第一」という日本の魚文化が生み出したものにほかなりません。
東京に住んでいながら、いまだ築地を訪れたことがない方は、ぜひとも市場が豊洲に移転してしまう前に、訪れてみることをお薦めします。
それが叶わぬ人は、これから公開される映画『TSUKIJI WONDERLAND』をぜひご覧になってください。銀座から歩いても10分で行ける場所に、東京の台所にして、東京人の胃袋を支えてきた不思議な世界があることを発見するに違いありません。
「築地」が、“世界一の魚市場”というより、“世界で唯一の魚市場”であることを知ることになるはずです。
※同映画は10月1日に築地・東劇で先行公開され、10月15日より全国ロードショーされます。
映画『TSUKIJI WONDERLAND』(築地ワンダーランド)
監督・脚本・編集:遠藤尚太郎
製作・配給:松竹メディア事業部
※映画の公式サイトはこちら
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。
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