、《日本アルプス十二題 劔山の朝》〔木版 大正15(1926)年 千葉市美術館蔵〕

《日本アルプス十二題 劔山の朝》〔木版 大正15(1926)年 千葉市美術館蔵〕

 

芸術家の吉田博(1876~1950)は福岡県久留米市の生まれ。18歳で上京して小山正太郎の画塾「不同舎」に入門、小山のもとで風景写生に励んで腕を磨きます。明治32年に渡米、英語での会話もままならない異国で自身の作品を大いに売って生活の糧を得るという快挙をなし、帰国後も外遊を重ねて洋の東西の芸術作法を見つめ、国内外の風景を取材しては水彩画や油彩画に描き発表しました。また、高山を愛し深山幽谷に分け入ることで新たな視界や未知の美を発見した作品を数多く残しています。

大正後期からは彫師・摺師(すりし)と組んだ木版画に軸足を移し、伝統的な木版画の技術に洋画の表現方法を加えた精巧で清新な造形で国内外の愛好家を魅了し続けました。

《フワテプールシクリ》〔木版 昭和6(1931)年 個人蔵〕

《フワテプールシクリ》〔木版 昭和6年(1931) 個人蔵〕

 

吉田博は生涯、世界における自らの位置を考え続けた画家でした。その思考の跡が、湿潤な日本の風景をみずみずしく描いた水彩画であり、雄大な自然を登山家ならではの視点から捉えた油彩画であり、浮世絵以来の技術を新たな解釈で手がけた木版画でした。

そんな風景画家の第一人者として活躍した吉田博の生誕140年を記念する大規模な作品展が4月9日(土)から、千葉市美術館で開催されます。本展では、代表作に加えて初公開の写生帖など300点余の作品が展示されます(会期中展示替えあり)。その見どころを、千葉市美術館広報の磯野愛さんにうかがいました。

「水彩画、油彩画、木版画と多様な手法で風景を描いた吉田博ですが、今回の展覧会では、そのみずみずしい感性が伝わる水彩画と技術の粋を尽くした木版画を数多くご紹介します。なかでも木版画は、伝統的な手法に洋画の表現を融合させるという斬新な手法を用いた造形として、ダイアナ元妃やマッカーサーといった海外の要人にも愛されました。国内はもとより海外での評価も高い吉田博の回顧展としては20年ぶり、関東圏では初めてのこととなります。この機会にぜひ「絵の鬼」と呼ばれた吉田博の画業をご覧ください」

生誕140年を記念した大回顧展です。ぜひ足をお運びください。

【生誕140年 吉田博展】

会場/千葉市美術館(千葉市)
会期/2016年4月9日(土)~5月22日(日)
住所/千葉市中央区中央3-10-8
電話番号/043-221-231
料金/一般1200(960)円 大学生700(560)円 ( )内は前売・20名以上の団体・千葉市内在住65歳以上の料金 ※高校生以下無料、障がい者手帳所持者と介護者1名は無料
開館時間/10時から18時まで、金・土曜日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日/4月25日(月)、5月2日(月)
アクセス/JR千葉駅東口より徒歩約15分またはバス乗場⑦番より大学病院行き及び南矢作行きで「中央3丁目」下車徒歩約3分、千葉市モノレール県庁方面行きで「葭川公園」下車徒歩約5分

 

千葉市美術館公式サイトはこちら

 

 

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